押すと痛い胸のしこり...もしかして乳がん?考えられる病気と原因・対処方法を解説
病気・症状と予防
2023年06月27日掲載
「胸にコロコロとしたしこりがある」「胸のしこりを押すと痛い」
このような自覚症状はありませんか?胸のしこりは、乳がんをはじめとするさまざまな疾患の症状の一つ。気になる症状がある場合は、早期に病院で検査を受けることが大切です。この記事では、胸のしこり・押すと痛いといった症状の原因や考えられる疾患・乳がんとの関連性などについて、LECINQ clinic院長 長谷川佳子先生に教えていただきました。
長谷川 佳子
【監修】LECINQ clinic院長
2012年 北里大学医学部卒業。2014年 横浜市立大学病院 形成外科入局 KO CLINICに勤務。藤沢湘南台病院、横浜市立大学附属 市民総合医療センター、横浜栄共済病院 小田原銀座クリニック勤務を経て、2020年ルサンククリニック診療部長就任。2021年 ルサンククリニック院長就任。所属学会は、日本形成外科学会、日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本レーザー治療医学会、日本抗加齢学会、日本乳癌学会、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会など多岐にわたる。
胸のしこりとは?乳がんとの関係は?
まずは、胸のしこりの概要や乳がんとの関係について解説します。
●胸のしこりとはどのような症状?
胸のしこりとは、乳頭から乳房全体に広がっている乳腺にできる、硬く触れる部分のことを指します。
ただ、「しこり」と一口に言ってもその状態はさまざまで、左右同じような場所にできている・押すと痛みがある・弾力があってコロコロ動く・硬くてあまり動かない・場合によっては熱感がある・膿が出るなどがあります。
●胸にしこりがある……これってイコール乳がんなの?
胸にしこりができているからといって、イコール乳がんというわけではありません。胸のしこりには、悪性のしこりと良性のしこりがあります。悪性の場合、乳がんである可能性が高く、良性の場合、乳腺繊維腺腫や乳腺症などの可能性が考えられます。
胸のしこりの原因は、調べてみなければわからない
ここまで解説したように、胸のしこりにはさまざまな状態(押すと痛い・動く・硬いなど)があります。しかし、マンモグラフィーや超音波検査などを受けてみないと、しこりの原因や良性か悪性かは判断できません。また、組織を顕微鏡などで確認しないと分かりにくいものもあります。気になる症状がある場合は、病院で検査を受けることが大切です。
胸のしこり、考えられる疾患としこりの特徴
胸のしこりがある場合、以下のような疾患が考えられます。それぞれの特徴を解説します。
●乳がん
乳がんとは、乳腺の組織にできるがんのこと。乳がんを発見するきっかけとなる症状の多くが、胸のしこりです。乳がんのしこりには、硬くて触っても動かない、もしくは動きづらい、そして痛みがないことが多いという特徴があります。また、がんが大きくなると、内側から皮膚を引っ張るようになるため、乳房や周辺の皮膚にしわやひきつれ・くぼみが生じたり、乳頭の形や位置が変わったり陥没したりすることも。このほか、乳がんの一種、無腫瘤性乳がんの場合血液が混ざった分泌液が出ることもあります。
●乳腺症
しこりができて検査を受けた場合に、診断として最も多いのが乳腺症。乳腺症は、性ホルモンの不均衡によって起きる良性疾患です。生理前に痛みが強くなり、生理が始まると軽くなるという特徴があります。また、しこりができるほか、乳頭から分泌液が出ることも。乳腺症の場合、治療の必要は特にありません。
●乳腺繊維腺腫
線維腺腫は、20〜40代の女性によくみられる、乳房にしこりができる病気です。弾力があって触るとコロコロ動き、痛みもないしこりができます。しこりの境界線がはっきりしているのも特徴です。
治療の必要はありませんが、大きくなりすぎた場合は切除手術を行う場合もあります。
●葉状腫瘍
葉状腫瘍は、乳腺に発生する比較的稀な腫瘍です。多くの場合は良性ですが、悪性だったり、良性と悪性の中間であったりするケースもあります。ジャガイモのように凸凹していて弾力があるしこりができるのが特徴です。しこりが急速に大きくなるという特徴もあるので、手術で切除する必要があります。再発することも多く、しこりが巨大化すると乳房を全摘せざるを得なくなることもあります。
●乳腺炎
乳腺炎は、出産後に乳腺に母乳が滞ったり、乳頭から乳腺に細菌が侵入したりすることで生じる炎症です。主に授乳期にかかりやすく、乳房全体の腫れやしこり・痛みを伴い、乳房が腫れたり熱が出たりすることもあります。乳腺炎の治療では、抗菌薬の処方や、母乳の滞りを改善するためのマッサージ、乳腺に溜まった膿の吸引処置などが行われます。
●乳管内乳頭腫
乳管内乳頭腫とは、乳管の中にできたポリープのこと。しこりのほか、乳頭から分泌液が出ることもあり、時には血液が混ざることもあります。良性のポリープではありますが、乳がんとの見分けが難しいため、経過観察が必要です。
●乳腺嚢胞(のうほう)
乳腺嚢胞とは、乳管の中に液体がたまり、袋状になる病気です。基本的には良性なので心配する必要はありませんが、大きくなったり張りが出たりする場合は、注射器で内容物を吸引する処置を行うこともあります。
胸のしこりに早めに気付くための対策は?
胸のしこりができている場合、乳がんのみならずさまざまな病気の可能性があります。胸のしこり・関連する病気に早く気づくために、セルフチェックや定期検診を受けましょう。
●セルフチェックをしよう
セルフチェックではご自身の通常時の胸の状態を確認し、変化にすぐに気づけるようにすることが大切です。
着替えや入浴、シャワーなどの際に乳房の状態を目で見たり手で触ったりして、異変がないか確認しましょう。
- 乳房痛の有無
- 乳房の腫瘤の自覚
- 乳頭からの分泌物
- 乳頭や乳輪のびらん
- 乳房の皮膚の凹みや引きつれ
●定期的に乳がん検診を受けよう
40歳以上の女性は2年に1回、乳がん検診を受けるようにしましょう。自治体が行なっている定期検診が受けられるクリニックであれば、検査費用の多くを自治体が公費で負担しているため、一部の自己負担で検診を受けることができます。かかりつけのクリニックがあれば、そこで受けても良いでしょう。
まとめ
胸のしこりというと、イコール乳がんと考える方が多いかもしれません。ですが、今回ご紹介したように、胸のしこりの原因となる疾患・異常はさまざまです。大切なのは、不安を放置せずに病院で診察や検査を受けること。しこりの原因を特定することで、初めて適切な治療が受けられるようになります。また、胸のしこりに気づくためには、普段からセルフチェックをしたり定期的に乳がん検診を受けたりすることも大事です。後々後悔しないように、ご自身の体に目を向けてしっかり向き合うようにしましょうね。
LECINQ clinic院長 長谷川 佳子
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。