耳から水がでる…その原因は?匂うとき・かゆいときの対処方法も
病気・症状と予防
2022年03月23日掲載
「耳からニオイのきつい水が出てきた」「耳の中にかゆみも感じる」こんな症状に身に覚えがある方は意外と多いのではないでしょうか。こういった症状には、耳の内部の疾患が関係している恐れがあります。最近は、耳かきのしすぎやイヤホンの常用で刺激が生じ、耳に炎症が起きやすい状態になっている人も多いとか。そこで今回は、耳から水が出るときやニオイやかゆみが気になるときの原因や対処方法について耳鼻科医の瀬尾先生に教えてもらいました。
瀬尾達
医療法人瀬尾記念会 理事長 瀬尾クリニック 院長
京都大学医学部大学院修了、日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医。厚生労働所指定 研修医療機関 指導医。厚生労働省指定 難病医。大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
INDEX
耳から水・・・こんな症状はありませんか?
耳から水が出る症状は「耳だれ」と呼ばれます。「耳だれ」の症状としては大きく以下の4つに分けられます。
・耳からサラッとした液体が出る
・耳からどろっとした粘度の高い液体が出る
・耳から出た液体がくさい
・耳の内側がかゆい
これらの症状が出ている方は、外耳道または中耳で何らかの異常が起きている可能性があります。
耳から水が出る・臭い・かゆいのはなぜ?
耳から水が出る・ニオイやかゆみが気になる場合、以下のような疾患が疑われます。
外耳道炎
耳から水が出たり、臭いニオイがしたり、かゆくなったりするのは、耳の中のどこかが化膿しているからと考えられます。多いのは、「外耳道」に生じた傷に細菌が感染しているケースで、これを外耳道炎と呼びます。放置していると、聴力低下、頭蓋骨に感染広がって顔面や頭部の神経が麻痺する恐れがあります。
外耳道湿疹
外耳道湿疹とは、外耳道に湿疹ができている状態です。強いかゆみや生臭いにおいのする水が出ます。外耳道炎の悪化や耳垢がたまりすぎると起こりやすい症状です。
アトピー性外耳炎
アトピー性皮膚炎の方の場合、外耳道にも炎症が起きることがあります。かゆみ、炎症をともない、生臭いにおいがする水が出たりします。
外耳道真菌症
外耳道真菌症とは、外耳道の中に真菌というカビの一種が発生している状態です。強いかゆみや耳が詰まった感覚、難聴などを伴うこともあります。
耳から水・生臭いにおい・かゆみ・・・日常の習慣が原因のことも
耳から水が出る・生臭いニオイやかゆみがあるといったケースでは、耳の疾患ではなく日常の習慣が原因になっていることがあります。
耳掃除のしすぎ
耳掃除のしすぎは、外耳道炎や外耳道湿疹の原因になることがあります。「日本人は耳かきをしすぎる傾向がある」と言われています。実は、耳掃除はほとんど必要ありません。基本的に、耳垢はある程度で耳から出ていくからです。まれですが大きいものなどができて、つまった感じ・ゴロゴロするなどがある場合は取り除きましょう。それ以外は、月に1.2回も行えば十分です。
耳掃除をするときは、耳かきではなく綿棒で優しく耳の中を軽く掃除する程度にしましょう。耳かきは硬いので、耳の中の皮膚を傷つけてしまうことがあります。また、深く掃除すると鼓膜を傷つけてしまうリスクがあるので、耳掃除は耳の入口から1センチくらいの深さまでに留めましょう。それ以上、深くやりたいときは耳鼻咽喉科で診てもらうことをおすすめします。
イヤホンの常用
イヤホンを長時間つけていると、外耳道がイヤホンで常に摩擦され、その刺激によって炎症を起こすことがあります。イヤホンを清潔にしていないと、細菌感染の原因になる恐れも考えられます。
耳の触りすぎ
耳の触りすぎによって耳だれが生じることもあります。耳の中にかゆみがあるとき、指先で患部を掻くという行為を繰り返すと、摩擦によって炎症が発生し、かゆみや痛みがさらに増します。かゆみや痛みが気になり何度も同じ行為を繰り返すと、細菌が感染しやすくなります。細菌感染が起こると、耳の中に膿がたまる、または膿が破れて耳から流れてくるといった症状につながります。
耳から水が出る・生臭いにおいがする・かゆいときの対処方法
病院で診てもらった方がいい症状の目安
何度も繰り返すかゆみは、なんらかの疾病の症状の可能性があります。放置せずに受診をおすすめします。また、膿を含んだ水(黄色、薄黄色っぽい水)・出血している箇所がある・臭いがするなどの場合も、外耳道炎などを起こしている可能性が高いので早めに受診しましょう。
放っておいても自然に治る?
外耳道炎の場合は、軽い症状であれば1〜2日で快方に向かいます。かゆみがあっても、かきすぎないように気をつけてください。1〜2日経ってもかゆみが取れない場合は、症状が進行していることが考えられます。放置しているとさらに悪化してしまいかねないので、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
外耳道湿疹の場合は、すでに外耳道のバリア機能が低下して症状が悪化しています。早めに耳鼻科で治療を受けるのをおすすめします。アトピー性外耳炎の場合は、皮膚の機能低下により外的な保護が必要です。耳鼻咽喉科、もしくはかかりつけ医を受診し、指示に従いましょう。
外耳道真菌症の場合は、細菌感染を起こしています。免疫が低下しているので、自然治癒は困難です。耳鼻咽喉科で皮膚洗浄を行い、抗真菌薬で細菌を滅菌する治療を最後まで行う必要があります。
まとめ
今回ご紹介したように、耳から水が出る・ニオイやかゆみがある場合、外耳道炎や外耳道湿疹・アトピー性外耳炎・外耳道真菌症といった疾患が考えられます。一般の方が症状の原因を自分で判断するのは難しいと言えますので、症状が繰り返し発生する場合は耳鼻咽喉科で診てもらうと安心です。
また、耳掃除のしすぎやイヤホンが原因であることも考えられます。症状が軽い場合は、「耳掃除の頻度を減らす」「イヤホンのサイズ変更したり小まめに掃除したりする」など、すぐにできる対策を試してみてください。
医療法人瀬尾記念会 理事長 瀬尾クリニック 院長 瀬尾達
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