犬の予防接種はなぜ必要?種類や打つ間隔・費用をご紹介
病気・症状と予防
2021年08月24日掲載
犬を飼うにあたって、犬を感染症から守るために必要不可欠なのが予防接種です。しかし、犬の予防接種はさまざまあるため、何を・いつ・どの間隔で接種するべきか分からず、戸惑っている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、犬の予防接種が必要な理由やワクチンの種類・打つ間隔・副反応・予防接種時の注意点・費用などについて、イーズ動物往診所の富田先生に教えていただきました。
冨田浩平
イーズ動物往診所 院長
往診専門動物病院のイーズ動物往診所。西洋医学と東洋医学の統合医療をもちいて、動物と飼い主様の負担の軽減、治療、未病対策、生活の質の維持を行っています。
犬の予防接種はなぜ必要?
犬に感染症を引き起こすウイルスは、生活の中のいたるところに存在しています。また、お散歩などで外に出れば他の犬と接触する機会もあり、感染リスクも高くなります。感染症の中には命に関わる病気も。特に子犬や高齢の犬は感染症への抵抗力が弱いため、予防接種が必要不可欠です。
また、犬から人に感染する「人獣共通感染症」というものもあります。この予防の観点からも、ワクチン接種が必要です。
犬のワクチンの種類
犬のワクチンは、「接種義務があるもの」「任意で接種するもの」の2種類に分けられます。
毎年接種義務があるワクチン:狂犬病ワクチン
法律によって毎年接種義務が定められているのが、狂犬病ワクチンです。接種しなかった場合、狂犬病予防法第5条違反となり、20万円以下の罰金に処せられる罰則が規定されています。
狂犬病は、発症した際の致死率がほぼ100%の恐ろしい感染症です。また、人に感染するおそれもあります。愛犬の命とご自身やまわりの人を守るために、必ず接種するようにしましょう。なお、狂犬病ワクチンは、市区町村の集団接種や動物病院で受けることができます。
任意で受ける混合ワクチン:コアワクチンとノンコアワクチン
接種義務はないものの接種が推奨されているのが、混合ワクチンです。混合ワクチンには、コアワクチンとノンコアワクチンがあります。このうち、コアワクチンは接種が強く推奨されています。
コアワクチン:接種が強く推奨されている
コアワクチンが対象とする感染症は、犬ジステンパー・犬伝染性肝炎・犬アデノウイルス(II型)感染症・犬パルボウイルス感染症の4種類です。これらの病気にワクチン未接種の状態で感染した場合、重症化しやすく、死亡率も高くなります。接種義務があるわけではありませんが、できるだけ接種することを強くおすすめします。
なお、ドッグサロンやドッグラン・ペットホテルなどでは、5種以上の混合ワクチンの接種証明書の提示を求められることもあります。
ノンコアワクチン:必要に応じて接種を推奨
ノンコアワクチンが対象とする感染症は、犬パラインフルエンザウイルス感染症・犬コロナウイルス感染症、犬レプトスピラ症などです。コアワクチンに該当する感染症ほど怖い病気ではない、もしくは発生が多くはありませんが、体の弱い犬や多頭飼いなどで通常よりも感染リスクが高いと判断される場合などは接種が推奨されます。
混合ワクチンの種類は、動物病院で相談するのがベスト
「何種混合のワクチンを接種すれば良いか」は、犬の月齢や生活環境・地域などによって異なります。室内犬なのか・室外犬なのか、ドッグランなどによく行くのか、住んでいる地域で感染症が流行しているかどうかなど、検討点はさまざまあります。病院で相談して決めるのが最も安心です。
犬の予防接種の間隔・スケジュール
犬の予防接種の大まかなスケジュールは以下となります。
・生後2か月頃:混合ワクチン1回目
・生後3か月頃:混合ワクチン2回目、狂犬病ワクチン接種・登録
※混合ワクチンとの同時接種は推奨されません。獣医師とスケジュールを相談しましょう。
・生後4か月頃:混合ワクチン3回目
・生後1年目以降:年1回の混合ワクチン接種、狂犬病ワクチン接種
※混合ワクチンとの同時接種は推奨されません。獣医師とスケジュールを相談しましょう。
【ワクチンを接種する頻度に関して】
・コアワクチン:抗体が低下した段階で追加接種
※個体差があり1年で切れてしまうこともあるため毎年の検査は必ず
・ノンコアワクチン:1年に1回または半年に1回
※個体差やワクチンの種類により効果が切れるタイミングが異なるため詳しくはかかりつけ医へ
予防接種にかかる費用
犬の予防接種にかかる費用は以下を参考にしてください。
狂犬病ワクチンの費用
狂犬病のワクチンを市区町村の集団接種で行う場合、費用は3000円前後です。あわせて、「狂犬病予防注射済票交付手数料」として一律550円がかかります。動物病院で接種する場合は、自由診療のため病院によって費用は異なります。
混合ワクチンの費用
混合ワクチンにかかる費用は、動物病院によって異なります。2種混合で3,000円〜5,000円程度、7種以上のワクチンでは7,000円~10,000円程度です。
ワクチン接種の副反応はある?
予防接種・ワクチン接種と聞くと、副反応が気になる方は多いかと思います。犬によっては、稀に以下のような副反応が出ることもあります。犬は言葉がしゃべれないため、異常を訴えることができません。予防接種を受けた後は、飼い主さんがいつも以上にしっかり様子を見守り、異変に気づいてあげることが大切です。
アナフィラキシー反応
アナフィラキシー反応は、予防接種後、数分から1時間以内に発症することがほとんどです。以下のような症状が現れます。
・ぐったりする
・昏睡状態
・けいれん
・チアノーゼ
・呼吸困難
・嘔吐
・尿失禁
接種後30分から1時間程度は、安静にして様子を注意深く見守るようにしましょう。少しでも様子がおかしいと感じたら、すぐに病院を受診してください。
アレルギー反応
アレルギー反応は、接種後数時間~数日のうちに発症します。以下のような症状が現れます。
・顔の腫れ
・全身のかゆみ
・接種部分のかゆみ・痛み
・湿疹
・発熱
・嘔吐
・下痢
・食欲低下
・活動量低下
アレルギー反応の出方は犬によってさまざまです。気になる症状がある場合は、病院に連絡をして受診の可否の判断を求めましょう。
ワクチン接種時の注意点
犬のワクチン接種を受けるにあたって、以下の点に留意しましょう。
接種は犬の体調が良いときに
ワクチン接種はできるだけ健康状態の良いときに受けさせることが大事です。接種の予約をしている場合も、当日の体調が悪そうであれば、動物病院に連絡し、後日に変更した方が良いでしょう。
病気の治療を受けている場合は、獣医師に相談して
持病のある場合や病気の治療を受けている場合は、その旨を必ず獣医師に伝えましょう。
副反応が出た場合に備えて、飼い主さんの予定がない日に接種する
稀にですが、ワクチン接種によってアナフィラキシー反応やアレルギー反応などの副反応が出ることがあります。万一に備えて、すぐに対応できるよう、飼い主さんの予定がない日に接種するようにしましょう。
接種当日は安静を心がけて
副反応が出なくても、ワクチン接種後はいつもより少し元気がなくなったり、疲れやすくなったりすることがあります。接種した当日は長距離の散歩や激しい運動は避け、おうちでゆっくりさせるようにしましょう。また、接種後はいつも以上に体調や様子を気にかけてあげてください。
まとめ
ワクチンは、恐ろしい感染症から愛犬の命を守るためのもの。狂犬病ワクチンは接種が義務づけられていますので、必ず毎年受けるようにしてください。任意の混合ワクチンに関しては、獣医師と相談して愛犬に必要な種類を接種させるようにしましょう。
イーズ動物往診所
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