赤ちゃんのRSウイルス感染症。症状と対処方法は?
病気・症状と予防
2021年07月29日掲載
赤ちゃんや乳幼児がかかる風邪の一種として知られるRSウイルス。通常は秋から春にかけて流行するウイルスですが、2021年は全く別のパターンを見せており、通常流行期は秋~冬頃ですが最近は夏頃より流行し今年は5月の連休頃より全国的に流行が見られます。
大人なら風邪症状程度で済むことがほとんどですが、小さな赤ちゃんがかかると重篤な症状を引き起こすこともあり、注意が必要です。そこで今回は、RSウイルスの症状や感染経路、感染した際の対処法などについて、小児科医、医学博士の藤原功三先生に教えてもらいました。
藤原功三
藤原小児科医院 院長
京都府立医科大学卒業。小児科専門医、医学博士。藤原小児科医院院長を務める。
赤ちゃんも感染するRSウイルスとは?
RSウイルスとは
RSウイルスは、発熱や咳・鼻水といった風邪の症状を引き起こすウイルスです。正式には「Respiratory syncytial virus / レスピラトリーシンシチアルウイルスといいます。Respiratoryとは「呼吸」という意味でSyncytialとは「親和性あるいはくっつく」という意味です。つまり呼吸器症状を引き起こすということを指します。通常3~6日間程度の潜伏期間の後、38℃以上の高熱や鼻水・咳などの症状が出ます。特に夜間の咳がひどくなります。
2歳までに1度は感染する
乳幼児のほぼ100%が2歳までに必ず1度はRSウイルスに感染します。RSウイルスはどこにでもいるウイルスなので、大人でも何回も感染します。ただし、大人や学童期の子供が感染した場合は重篤化することは稀で、軽い風邪症状で済むことがほとんどです。
1歳未満の赤ちゃんは重篤化しやすい
特に注意が必要なのは、初感染時や1歳未満の赤ちゃんがかかった場合です。上記の症状のほか、細気管支炎や肺炎といった重篤な症状が起きることもあります。1歳を過ぎれば重症化リスクは減少するのが一般的です。しかし3~4歳までは発熱や咳が目立つことが多いです。
基礎疾患がある赤ちゃんは重篤化しやすい
前述した通り、1歳未満の赤ちゃんは重篤化する恐れがあります。このほかにも、以下に該当する赤ちゃんは、月齢問わず重症化のリスクが高くなります。
INDEX
- 早生児(出生体重が軽く、小さく生まれた赤ちゃん)
- 心臓や肺に基礎疾患を持っている
- 神経・筋疾患を持っている
- 免疫不全の基礎疾患を持っている
RSウイルスの感染経路
RSウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
飛沫感染
感染者のくしゃみや咳などと共に飛び出したウイルスを吸い込むことによって感染します。これによる感染が最多です。
接触感染
感染者と直接触れ合うことで感染します。また、感染者が触れた物に触れたりなめたりすることで、ウイルスが喉や鼻の粘膜に付着して感染することもあります。
赤ちゃんは、目についた物を何でも口に入れてしまうものです。保育園でRSウイルス感染症が流行しているときや、家族に感染者がいるときは、特に衛生対策をしっかり行うことが大事です。
RSウイルス感染時の赤ちゃんの症状
一般的な症状
大人や学童期の子供は、ほぼ毎年RSウィルスに感染しており免疫抵抗力もしっかりしているため症状は目立ちません。3~5歳の幼児では発熱や咳・鼻水の症状を認めますが一般の風邪(他のウィルスによる)症状との区別がつけにくい場合が多いです。
- 発熱
- 鼻水
- 咳
1歳未満の赤ちゃんは重症化のリスクも
1歳未満の赤ちゃんの場合、上記の症状に加えて以下のような症状が出ることもあります。重症化のリスクがありますので注意が必要です。
- 「ぜーぜー」という喘息のような苦しい呼吸
- 呼吸が早く、呼吸数も極端に多い
- 顔色や唇の色が悪くなる
こういった症状が見られる場合は、肺炎や気管支炎・細気管支炎を発症している可能性があります。
呼吸の異常が見られるときは、すぐに病院へ
赤ちゃんが発熱や鼻水・咳をしていれば、ほとんどの保護者の方が病院に連れていくかと思いますが、特に先に挙げた「呼吸の異常」が見られる場合は、早急に病院で診てもらってください。肺炎や気管支炎などの合併症を発症すると、酸素投与や点滴などの処置や入院が必要になることもあります。
RSウイルス感染時の対処方法
RSウイルス感染症に対する病院での治療とは
RSウイルスそのものに効く抗ウイルス薬はありません。そのため、症状にあわせた対処療法が治療の中心となります。熱が高い場合は解熱薬を処方するほか、痰の吸入などの理学療法を行うこともあります。
なお、重症化リスクの高い乳幼児(早産で生まれた子供・慢性肺疾患や先天性心疾患を持っている子供)に対しては、重症化抑制薬を予防的に投与することもあります。
自宅療養で気をつけるべきポイント
RSウイルス感染症は、通常7日から12日程度で症状が治まっていきます。合併症や重症化のリスクが少ない場合は、この間は自宅での療養となります。病院で処方された薬がある場合は指示に従い、ゆっくり休むこと・栄養や水分を補給することを重視してください。特に脱水症状を起こすと危険なので、水分補給はしっかりと行いましょう。水分量は1回量を少量にして頻回に与えてください。
なお、軽快後も1〜3週間程度はウイルスの排出が続きます。そのため、同居家族に他にも赤ちゃんがいる場合や重症化リスクのある方がいる場合は、引き続き感染予防に努めることが大切です。
保育園や幼稚園への登園はいつからOK?
同じウイルス感染症でも、インフルエンザやおたふくかぜなどの場合は出席停止期間に関する規則が定められています。しかし、RSウイルス感染症に関しては明確に定められてはいません。登園の目安は「(1)解熱後2日以上経過」「(2)特有の咳が昼間や夜間にほとんど認められない」「(3)食欲がいつも通り」以上の3つがそろえばまず大丈夫でしょう。不安な方は担当医師に相談してみてください。
RSウイルスの予防方法は?
RSウイルスの予防の基本は、手洗い・うがい・マスクです。今は多くの人が習慣化しているかと思いますが、今一度これらを徹底しましょう。
大人が赤ちゃんに移すのを防ぐためには、赤ちゃんと接する際は必ずマスクを着用しましょう。また、赤ちゃんが触りそうなものにはアルコール消毒を。RSウイルスの流行時は、特に予防対策を徹底してあげてください。
まとめ
例年であれば秋から冬・春にかけて流行するRSウイルス。学童期の子供や大人にとってはさほど脅威ではないものの、赤ちゃんにとっては危険なウイルスです。季節外れの大流行を見せている今、赤ちゃんが感染しないようできるだけの予防対策を。また、発熱や咳・呼吸の異常など少しでも異変が見られたら、すぐに病院で診てもらうようにしましょう。
藤原小児科医院 院長 藤原功三
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