敏感すぎて疲れるのはHSPかも?HSPの特性と対処法とチェックポイント
病気・症状と予防
2021年07月28日掲載
「ちょっとしたことで落ち込んでしまう」「些細なことが気になって心が休まらない」など、繊細過ぎる性格でお悩みの方もいるのではないでしょうか?それはあなたが「HSP」に当てはまるからかもしれません。HSPとは、「ハイリー・センシティブ・パーソン/Highly Sensitive Person」の略で、生まれつき繊細な性格の人のことを指します。この記事では、HSPの特性やセルフチェック方法・対処方法などについて解説します。
田中遥
べスクリニック(Besli Clinic)院長
福島県会津高校、東京慈恵会医科大学医学部卒。大学時代は部活・勉学の傍らコンサルティング会社でのインターン、医療産業イノベーションフォーラムに出席し、当時出会った友人とともにApplicare医療系アプリ開発コンテストの開催に携わる。 その後聖隷浜松病院で研修を行い、2018年4月よりBesli Clinicで勤務。順天堂大学にて自律神経の研究を行い、単に病気が治る医療ではなく、どのように生きるかを追求する医療を目指している。
HSPとは?
HSPとは、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略称です。アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱された概念で、生まれつき視覚や聴覚をはじめとする感覚が人よりも敏感で、外からの刺激に影響を受けやすい人のことを指します。他人に対しての共感度が高い人も多く、相手の感情の影響を過剰に受け、ストレスを感じやすい傾向があります。
HSPという概念は、近年一般的にも知られるようになってきました。ネット上では「繊細さん」などと呼ばれることも。HSPが注目されるようになった背景には、SNSの普及が関係していると考えられます。SNSでは誰でも自由に意見を発信し、不特定多数の意見を目にすることができるため、HSPの人は刺激に当てられて疲弊してしまうのです。
HSPの人の特性とは?
HSPの人は以下のような4つの特性を持つとされています。
Depth of Processing 物事を深く考える
HSPの人はシンプルな物事・事象に対しても深く考察したり、簡単に結論が出るようなことでもさまざまな思考を巡らせたりする傾向があります。
Overstimulation 刺激に対して過剰に反応する
HSPの人は外敵刺激に対して過敏に反応する傾向があります。それゆえに疲れやすかったり、ストレスを感じやすくなったりします。環境や人間関係に変化があると、強く混乱する人もいます。
Emotional response and empathy 感情の反応が強く、共感力が高い
HSPの人は他人に強く共感するため、相手の感情の影響を受けやすいと言えます。他人の仕草や言い回しなどから感情を過敏に察知するため、ストレス状態に陥りやすくなります。また、全体的に物事に対する感情の反応も強い傾向があります。
Sensitivity to Subtleties 些細な刺激に敏感である
HSPの人は脳の扁桃体の機能が過剰に働きやすいため、感覚的な刺激に対して敏感です。普通は気づかないような光や音・匂いなどの刺激に敏感で、不安や恐怖を感じやすいとされています。
HSPの人が抱えやすい悩み
HSPの人は上記のような特性を持っているため、以下のような悩みを持ちやすいと言えます。
- 他人の言動や仕草などから気持ちを敏感に汲み取れるため、自分の行動や発言をつい相手に合わせてしまう
- 常に周りの環境や他人に気を遣うので、ストレスを感じてしまう
- 他人のネガティブな感情の影響を強く受け、自分も気分が滅入ってしまう
- 相手のことを気にするあまり、何かトラブルが生じると「自分が悪いのではないか」と考えやすく、自己否定に陥ってしまう
- 音や光に気を取られ、集中できなかったり物事が手につかなくなったりする
HSPならではの強みもある
HSPの特性を持っていると、対人関係や社会生活において、さまざまな悩みやトラブルにぶつかることがあります。ですが、HSPの特性は必ずしもマイナスなことばかりではありません。例えば、「他人への共感力が高い」というのは、言い換えれば「人の気持ちを汲み取ってあげられる」ということ。「感情の反応が強い」というのは、「小さなことでも喜びを感じたり感動できたりする」ということです。大変な面があるのは事実ですが、こういった素敵な側面があることも理解しておくと、少し心が軽くなるかもしれません。
発達障害や適応障害との違い
HSPの特性は、発達障害や適応障害の症状と似ている部分があります。ただし、HSPは心理学としての分類であり、発達障害・適応障害は精神医学としての分類です。あくまでHSPはその人の傾向であり病名ではありません。そのためHSPを持っている方で発達障害・適応障害と診断を受ける方もいらっしゃいます。
HSPセルフチェック
HSPの人はその繊細さゆえにストレスにさらされやすく、人間関係を上手に築けなかったり生きづらさを感じたりしやすいと言えます。そういった辛さを抱えている方は、もしかするとHSPの傾向があるのかもしれません。以下にHSPの項目を列挙しますので、心当たりのある方はチェックしてみてください。
□自分をとりまく環境の変化によく気づく
□些細なことでもすぐに驚く
□忙しい日々が続くと一人になりたくなる
□他人の気分に影響を受けやすい
□美術や音楽に深く心を動かされる
□デリケートな香りや味、音楽を好む
□想像力が豊かでよく妄想や空想をする
□空腹になると、集中できなくなったり、気分が悪くなったりする
□カフェインを摂ると体調が変化しやすい
□痛みに敏感
□暴力的な映画やテレビ番組が苦手
□明るい光や強い臭いが苦手
□肌触りの悪い服が苦手
□騒音が苦手
□短期間に複数の事柄を行うのが苦手
□競争させられたり、観察されていたりするのが苦手
□生活パターンの変化を嫌う
□日常生活で動揺するような場面を嫌う
□幼少期に大人から「敏感だ」「内気だ」などとよく言われた
HSPへの向き合い方・治療はできる?
HSPの治療
HSPは「病気」ではありません。生まれながらの特性であり、薬や治療で治せる類のものではないのです。ですから、自分自身の特性として上手に付き合っていくために、悩みやトラブルに突き当たったときの対処方法を身につけておくことが大事です。
HSPの対処方法
HSPの特性を自分自身で理解する
HSPの人は感覚が人よりも繊細で、それゆえに悩みやトラブルを抱えがちです。他の人にとっては気にならないことが気になったり、些細な言動に心を掻き乱されたりしてしまいます。感覚の繊細さの度合いが他人と違うということです。そこでまずはHSPの特性を自分できちんと理解することが、HSPの対処方法のひとつのポイントだと言えるでしょう。例えば、他人の振る舞いや言動に、「なんでそんなに配慮がないんだろう」「どうしてもっとこうしてくれないんだろう」「私が嫌われているのかな」などと感じることがあるかと思います。でも実際のところは、相手には何の悪意もないかもしれません。「自分が考えすぎやすい性格だ・感じやすい性格だ」という自覚を持っておくだけでも、心に余裕ができ、ストレスを軽減できるのではないでしょうか。
ストレスや緊張を感じる状況を回避する
ストレスや緊張を感じにくい状況に身を置くようにすることも大切です。自分が苦手だと感じる場面(知らない人が多くいるイベントなど)はできるだけ避けるか、短時間から慣らしていくと良いでしょう。ほかにも、不特定多数の他人の意見や膨大な情報が飛び込んでくるSNSは、HSPの人と相性が良いとは言えません。ネガティブなニュースや意見に触れると、必要以上に落ち込んだり悲しくなったりしてしまいやすいのです。ですから、「これ以上見ていると気分が滅入るな」「なんだかタイムラインの雰囲気が悪いな」と感じたら、すぐにアプリを閉じて離れることが大事です。
医療機関を受診した方がいいケースもある
HSP自体は生まれながらのその人の特性であり、治療が必要な疾患ではありません。しかし、HSPの特性ゆえに、うつ病や適応障害・パニック障害・気分変調性障害といった精神疾患に陥ってしまうこともあります。また、HSPの特性と自閉症スペクトラム障害や発達障害の特性は似ている部分も多く、見分けが難しいことも。対人関係や日常生活において強い生きづらさやストレスを抱えている場合は、一度心療内科を受診して相談してみると良いでしょう。
まとめ
「もしかしてHSPなのかな?」と思ったら、まずは家族や友人など信頼できる人に話してみると良いでしょう。自分の特性を身近な人に理解してもらうだけでも、状況が改善することもあります。まわりには相談しにくい方や、日常生活にも支障が出るほど強いストレスを感じている方や深刻な状態にある方は、心療内科やメンタルクリニックなどの専門機関に頼るのも一つの手です。
べスクリニック(Besli Clinic) 院長 田中 遥
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。