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暑い時期に悪化の恐れが。アトピー性皮膚炎の予防と治し方

「子供がかかる病気」というイメージが強いアトピー性皮膚炎ですが、現代では大人になっても治らない人や、大人になってからアトピー性皮膚炎を発症する人が増えています。アトピー性皮膚炎は、皮膚の強い乾燥やかゆみによって眠れなくなったり、かきむしることでさらに炎症が起きたりなど、放っておくとやっかいな病気です。特に夏場は症状が悪化しやすい時期。

そこで今回は、アトピー性皮膚炎の症状や要因・予防方法・治療方法などについて、皮膚科医の猿喰浩子先生に教えていただきました。

猿喰浩子(さるばん ひろこ)

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 副院長・皮膚科部長

山口大学医学部卒業後、大手前病院や大阪警察病院・関西労災病院などに勤務。現在は、市立東大阪医療センター副院長・皮膚科部長を務める。専門はアレルギー性皮膚疾患や乾癬(かんせん)。日本皮膚科学会 専門医・指導医。

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 副院長・皮膚科部長 猿喰浩子(さるばん ひろこ)

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、皮膚が乾燥したり、かゆみをともなう湿疹が出たりする疾患。良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。アトピー性皮膚炎では、皮膚の乾燥やかきむしることで皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなり、さらに症状がひどくなってしまいます。

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎では、以下のような症状が起こります。

【軽度】
  • 肌のかさつき(白い粉をふいたような状態)
【中程度】
  • 皮膚の乾燥がひどくなる
  • 皮膚の赤みが悪化する
  • かゆみが増し、かくことで引っ掻き傷やかさぶたができる
  • 湿疹から汁が出る
  • 皮膚が腫れる
【重度】
  • 乾燥が悪化し、硬くごわつき、皮膚が厚くなる
  • 赤みが広範囲に及ぶ
  • 赤みの色が濃く、真っ赤になる
  • かゆみが増し、かくことで掻き傷やかさぶたが悪化する
  • 湿疹から汁が出て、腫れがひどくなる
  • 患部の皮が裂ける

アトピー性皮膚炎が発症しやすい部位

アトピー性皮膚炎の症状は、顔や耳の周り・首などの皮膚が薄く弱いところや、ひじやひざの内側など擦れたり刺激を受けたりしやすい部位を中心に現れます。年齢によっても発症しやすい部位に特長があり、乳幼児期では顔面や頭皮、小学生前後の子供では首・肘の内側など。大人の場合は部位を問わず全身に現れる可能性があります。

アトピー性皮膚炎を引き起こす要因

アトピー性皮膚炎を引き起こす要因

アトピー性皮膚炎を発症するかどうかは、体質によるところが大きいと言えます。皮膚の性質やアレルギーなどが発症要因として考えられます。

元々の皮膚に関する要因

もともとの皮膚が持つ性質によって、アトピー性皮膚炎を発症しやすい方もいます。

  • 皮膚が乾燥しやすい人
  • 皮膚のバリア機能が弱い人
  • かゆみを敏感に感じやすい人

体質に関わる要因

・喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎の既往歴がある人

気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎の既往歴がある人は、アトピー性皮膚炎を発症しやすいことがわかっています。

・ダニやハウスダストアレルギーの人

アレルギー体質の人はアトピーを発症しやすいと言われています。特に、ダニやハウスダストのアレルゲンを持っている人は、アトピー性皮膚炎を起こしやすい傾向があります。

・乳幼児期は食物アレルギーとの関連も

乳幼児期のアトピーでは、食物アレルギーの関連も示唆されています。大人になってからのアトピーの場合は、乳幼児期ほどには重要な悪化因子ではありません。

アトピー性皮膚炎の悪化因子とは

アトピー性皮膚炎の悪化因子とは

●アトピー性皮膚炎の悪化因子は複合的

アトピー性皮膚炎には、良くなったり悪くなったりを繰り返すという特徴があります。悪くなる要因は複合的で、気候の変化や精神的なストレス・環境の変化などが関連しあっています。

●大人になってアトピーが悪化する理由

大人になってからアトピーになった・アトピーが悪化したという方が多いのは、悪化因子にさらされる機会が増えるからと言えます。花粉やハウスダストなどのアレルギーや密閉性の高い住環境・仕事によるストレスなど、さまざまな要因が考えられます。

●暑い時期に悪化する理由

アトピー性皮膚炎の症状は、夏に悪化しやすいと言われています。これは、紫外線や汗が皮膚への刺激になるからです。汗をそのままにしていると、かゆみがひどくなったり炎症が悪化したりしてしまいます

ただし、汗をかくこと自体が悪いわけではありません。むしろ汗をかくこと自体は、皮膚の保湿作用の面から見て推奨すべきと言えます。悪いのは、汗をかいてそのままにしておくことです。汗をかいたらすぐにふく・シャワーをあびるなどして、汗を取り除くようにしましょう。

大人のアトピーの病院での治療方法

大人のアトピーの病院での治療方法

皮膚科では、アトピー性皮膚炎の治療を行なっています。なかなか治らない炎症や眠れないほどのかゆみなど、アトピーと思われる症状で悩んでいる場合は、一度受診してみると良いでしょう。病院では以下のような治療を行うのが一般的です。

●病院での一般的なアトピー治療

・診察

まずは症状を見てアトピー性皮膚炎かどうかを判断します。似たような症状で別の病気のこともあるからです。また、問診によってアトピーの悪化因子を探します。

・検査

アトピー治療では、悪化因子を探って除去することが重要です。そこで、悪化因子を探るために、アレルギーの有無を調べる血液検査を行います。ダニやハウスダスト、ペットの毛など、子供の場合は食物アレルギーについても確認します。

・薬物治療

アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイド外用薬の処方がメインとなります。軽度の患者さんには非ステロイドのお薬を出すケースもありますが、症状が悪化している患者さんの場合はステロイド外用薬を使って炎症を取り除くことが重要です。このほか、かゆみには抗ヒスタミン剤内服を処方します。アトピー治療において重要なのは、根気よく治療を続けることです。「良くなったかな」と思っても、目には見えない炎症が残っていることもあります。悪化・再発を防ぐために、処方されたお薬は、一定期間は塗り続けるようにしてください。 

なお、軽度の患者さんの場合は、スキンケアを見直し保湿をしっかり行うだけで改善することも珍しくはありません。皮膚科では、朝晩のスキンケア用の保湿剤を処方することもあります。

アトピーの悪化防止・改善のためのポイント

アトピーの悪化防止・改善のためのポイント

アトピー性皮膚炎は良くなる時期と悪くなる時期を繰り返す病気で、一朝一夕ではなかなか治せないのも事実。焦らずに治療を続けるとともに、自宅でのスキンケア(保湿ケア)と、アトピーを悪化させる要因を遠ざける・除去することが重要です。

スキンケアのポイント

アトピー性皮膚炎では皮膚の乾燥がひどくなるので、保湿をしっかり行うことが大事です。おすすめなのは、ヘパリン類似物質を含んだ保湿剤やワセリンです。これらは病院で処方されることもありますが、ドラッグストアなどでも販売されています。

お風呂の入り方にも気を配って

アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が低下しています。摩擦や刺激に弱い状態なので、お風呂でゴシゴシ洗うのは避けましょう。洗浄剤をしっかり洗い流して肌に残さないようにするのも大事です。

湯船に浸かるのもおすすめです。湯船に浸かることで角質がやわらかくなり、お薬や保湿剤の浸透も良くなります。ただし、熱すぎるお湯や長時間の入浴は、乾燥やかゆみを悪化させやすいので避けた方が良いでしょう。汗をかかない程度のぬるま湯に短時間浸かるようにしてください。

また、お風呂から上がったらすぐに(肌に水分が残っているうちに)保湿剤を塗ることを忘れずに。このとき、保湿剤を皮膚にすり込むのではなく、優しく伸ばすよう意識しましょう。

食習慣も見直しを

アトピーの症状があるときは、刺激物や飲酒は避けた方が良いでしょう。刺激物はかゆみを誘発する恐れがあります。また、飲酒をすると体温が上がるので、かゆみを感じやすくなります。

衣類の素材を見直すことも大事

肌に触れる衣類も見直しを。おすすめなのは、コットンなどの天然素材です。化学繊維を使用した衣類は皮膚への刺激になる恐れがあります。

●睡眠をしっかりとり、規則正しい生活を

規則正しい生活をすることは、自律神経を整えるという意味でアトピー改善のポイントになります。「毎日できるだけ同じ時間に起きる・寝る」を意識しましょう。睡眠を十分にとることも重要です。睡眠不足だとストレスがたまりやすく、自律神経のバランスも乱れやすくなってしまいます。

●部屋を清潔に保つ

大人のアトピー性皮膚炎は、ダニやハウスダストアレルギーとの関連性が深いと言われています。ダニやハウスダストを防止するために、定期的に掃除をして部屋を清潔に保ちましょう。特に、滞在時間の長いベッド周りやリビングの掃除はこまめに行ってください。

●適度な運動は◎、ただし汗をかいたらすぐに取り除いて

汗には保湿因子が含まれているので、運動をして軽く汗をかくのは皮膚にとって良いことだと言えます。近頃は在宅時間が増えていることもあり、いつも以上に運動不足になりがちです。ウォーキングなど軽めの運動習慣をつけるようにしましょう。ただし。かいた汗をそのままにしておくと、かゆみや炎症を悪化させる原因に。汗をかいたままにせず、すぐに拭き取ったりシャワーを浴びたりすることが大事です。

まとめ

本格的に暑い季節になるにつれ、汗をかくことでアトピー性皮膚炎の症状が悪化する恐れが考えられます。また、今年はマスクをつける機会が多いので、その摩擦や刺激が症状の悪化を招くことも。つらい症状を抑えるためには、スキンケアや生活習慣などの見直しとともに、炎症を治すための治療が重要になります。アトピー性皮膚炎の症状に心当たりがある方は、一度皮膚科を受診してみてはいかがでしょうか。

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 副院長・皮膚科部長 猿喰浩子(さるばん ひろこ)

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