やめたいのにやめられないタバコ...!禁煙外来専門医に聞く失敗しない禁煙方法
病気・症状と予防
2021年04月30日掲載
健康のことを考えても金銭的に見ても、たばこをやめた方がいいことは分かっているのにやめられない……
昨今の禁煙推進の動きの中で、たばこがやめられなくて困っている喫煙者の方は多いと思います。なぜたばこはそんなにもやめられないのでしょうか?確実に禁煙をするにはどうしたらいいのでしょうか?
この記事では、禁煙外来の先生に、禁煙に失敗してしまう理由や失敗しない禁煙方法について詳しくお聞きしました。
安井 潔 院長
医療法人弘清会 四ツ橋診療所
「地域に密着した医療」をモットーに活動する、四ツ橋診療所の院長。慢性の病気や生活習慣病などの予防はもちろんのこと、アンチエイジング(抗加齢予防医学)にも力をいれている。
たばこがやめられないのはなぜ?
たばこがやめられないのには、以下のような理由があります。
●ニコチン依存
たばこがやめられない最大の原因は、ニコチン依存です。たばこを吸うと、たばこに含まれるニコチンが血中に入り、脳にあるニコチン受容体がニコチンを感知します。すると、快感を感じるドーパミンが分泌され、「落ち着く」「ほっとする」といった満足感を得られます。
しかし、ニコチンはある程度の時間が経つと切れてしまいます。すると、イライラしたり落ち着かなくなったりなどの離脱症状が。そしてそれを解消するためにまたたばこを吸ってしまう……こうしてニコチン依存になっていくのです。
●習慣化
「朝起きたらとりあえずたばこを吸う」「食事の後はたばこを吸う」「暇になるとなんとなくたばこを吸う」など、喫煙が生活のルーティンになっている人は少なくないでしょう。このように習慣化している喫煙行為は、なかなか改められません。
たばこの健康被害とは?
喫煙者は、以下の疾患の発症リスクが高まるとされています。
- がん(肺がんはもちろん、口腔がんや咽頭がん、全身のがんの発症リスクが上昇)
- 動脈硬化
- 脳卒中
- 心筋梗塞などの心臓病
また、喫煙者にはこんなリスクもあります。
- 手術後の回復力が遅くなる
- 肺機能の低下
- 息切れ
- 全身の倦怠感
- 歯周病
- 口臭
●たばこの害とたばこの軽さ・重さは関係ない!
「タール1mg ニコチン0.1mg」のたばこと、「タール12mg ニコチン0.9mg」のたばこでは、みなさんはどちらの健康被害が少ないと思いますか?低ニコチン・低タールのたばこにすれば、健康への害は少なくなる……と思っている方は多いかもしれません。しかしこれは間違いです。軽いたばこも重いたばこも健康への被害は変わりません。
たばこのパッケージに表記されているニコチン・タールの数値(mg)は、喫煙時の煙を機械で計測した数値です。軽いたばこは、フィルター部分に空気穴をたくさん空けることで吸い込むニコチンやタールの量を薄めているので、計測値が低くなるのです。しかし、喫煙するときは指や唇で空気穴をふさいでしまいます。そのため、重いたばこを吸っているのと変わらなくなります。ニコチン量・タール量にかかわらず、たばこには健康への害があると覚えておきましょう。
禁煙で得られるメリットは?
●健康に関するメリット
ご自身の健康に関わるメリットとしては以下が挙げられます。
- がんのリスク低下
- 脳卒中のリスク低下
- 心筋梗塞のリスク低下
- 脳血流の回復
- 肺機能のそれ以上の低下
※一度低下した肺機能は、たばこをやめても回復しません。しかし、たばこをやめるとそれ以上の低下を防ぐことはできます。
健康面以外のメリット
禁煙によって得られるメリットは、健康面だけではありません。近年は全世界的に禁煙を勧める動きが進んでいるので、喫煙者への逆風を肌で感じている方は多いはずです。
・まわりの人への副流煙防止
喫煙時の副流煙は、主流煙同様に健康被害をもたらします。禁煙によってまわりの人への健康被害を防止できます。また、喫煙者と一緒にいると服に匂いがついて嫌という方は多いものです。禁煙すれば匂いでの迷惑もかけずに済みます。
・子供の喫煙防止
たばこを吸う大人を見て子供が真似して喫煙する…ご自身が禁煙することでこういったリスクの予防につながります。
・節約
たばこは年々値上がりしています。例えば1箱500円として1日1箱吸う場合、1ヶ月で1.5万円たばこ代として使っている計算に。禁煙は大きな節約になります。
自分で禁煙!断念しないためのコツと工夫
●禁煙を続ける・断念しないためのコツ
・周囲に禁煙宣言をする
禁煙は、ダイエットと同じくひとりでやると挫折しがちです。挫折しないためには、家族や友人・同僚などに禁煙宣言をするのがおすすめです。また、誰かと一緒に禁煙をするのも良いでしょう。
・禁煙する目的を忘れない
たばこがやめられないのは、前述したようにニコチン依存が大きいと言えます。ゆえに、意志を強く持っていないとどうしても自分に負けてしまいます。そこで、「なぜ禁煙するのか」目的意識をはっきり持ち、それを忘れないようにすること大事です。
・たばこがある環境を避ける
固い意志で禁煙を始めても、まわりの人が吸っているとどうしても吸いたくなってしまうものです。喫煙所や飲み会など、たばこを吸う人がいる環境をできるだけ避けるのも大事です。灰皿やライターなどの喫煙具も破棄しましょう。
●禁煙によるストレスを減らすための工夫
禁煙を始めると、ニコチン欠乏によってイライラしたり落ち着かなくなったりする人がほとんどです。そういった場合は、ニコチンガム(ニコチンを含有したガム)を利用するのもおすすめです。ニコチンガムは薬局でも購入できます。単純に口寂しいと感じるときは普通のガムを噛んだり、飲み物を飲んだりして紛らわせるようにしましょう。
確実な禁煙をしたいなら。禁煙外来での治療方法
自分だけでは禁煙ができそうにない方や本気で禁煙を成功させたい方は、禁煙外来を利用するのも選択肢のひとつです。禁煙外来を利用した方が、ご自身だけの力で禁煙するよりはるかに成功率が高いと言えます。
●禁煙外来って何をするの?
・宣誓書を書く
禁煙外来では、治療を始める前に宣誓書を書きます。ご自身の名前とともに、禁煙開始日を記入します。
禁煙開始日は今日でも明日でも来週でも構いません。日付を決めて始めること、決意を文書にして残すことが大事だと言えます。
・禁煙補助薬による治療
禁煙外来での治療のメインはニコチンパッチと飲み薬による薬物療法です。禁煙補助薬を使うことでニコチン切れによる離脱症状を防ぎ、禁煙を続けやすくします。
【ニコチンパッチ】
ニコチンを含有したパッチを体に貼り、皮膚からニコチンを吸収させます。だんだんニコチンの含有量を減らし、ニコチン依存を改善していきます。
【飲み薬】
脳のニコチン受容体に薬が結合することで少量のドーパミンが放出され、ニコチン欠乏による離脱症状やたばこへの切望感を軽減させます。最初は少ない量から始め、だんだんと量を増やしていき、ニコチンが切れても平気な体に慣らしていきます。
・生活指導
禁煙外来では、生活指導も行います。生活習慣に関してお聞きし、禁煙が続けやすい習慣・環境作りのアドバイスを実施します。禁煙をはじめたら、喫煙者の空気に流されないようにしましょう。
●禁煙外来での治療にかかる期間・費用は?
・期間
禁煙外来の治療にかかる期間は2ヶ月〜3ヶ月程度。初回診療でお薬を出してもらい、その後は2週間ごとに合計4〜5回の受診が必要です。
・費用
禁煙外来での治療は健康保険が適用されます。自己負担が3割の方の場合、約3ヶ月の治療スケジュールで1.5万円〜2.5万円程度です。なお、過去に健康保険で禁煙治療を受けたことがある方の場合、前回の治療開始から1年が経過していないと健康保険は適用されません。
まとめ
がんや心臓病・脳梗塞などさまざまな健康リスクがある喫煙。コロナ禍での健康意識の高まりも手伝って、「今こそ禁煙をはじめようかな」と思っている方はきっと多いと思います。禁煙をするのに「今さら」ということはありません。ぜひこの機会に禁煙を始めてはいかがでしょうか。
医療法人弘清会 四ツ橋診療所 安井 潔 院長
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。