冷えが原因?冬に関節が痛くなる原因と対処法
病気・症状と予防
2021年02月25日掲載
「冬になると関節が痛くなる」というのは、多くの方が抱えている悩みです。日常生活に支障をきたすこともある関節の痛みは、正しく原因を知り早めに対処することが大切。
放っておくと慢性的な関節炎に発展する恐れもあります。そこで今回は、冬場に関節痛が現れやすい原因や対処法・予防法などについて、整形外科医の高宮尚武先生に教えていただきました。
高宮 尚武
大阪府済生会吹田病院 整形外科科長(部長)
関西医科大学卒業、京都府立医科大学大学院博士課程修了。愛生会山科病院や京都山城総合医療センター・京都府立医科大学付属北部医療センター・京都府立医科大学などを経て現職に。専門分野は、膝関節外科(人工関節・靱帯再建)・スポーツ整形外科など。
冬に関節が痛くなりやすいのはなぜ?
冬に関節が痛くなりやすい理由
冬は寒さのせいで関節が冷えやすくなります。さらに、関節まわりの筋肉も寒さで硬直し、しなやかさが足りなくなりがちです。そのような状態で体を動かすと、関節にも負担がかかり痛みが生じてしまいます。
どんな部位が痛くなりやすい?
どの部位に痛みが出やすいかは、生活習慣や運動習慣によります。体重の負荷がかかりやすい上に動かす機会の多い膝をはじめ、運動をよくする方は下半身の関節、ゴルフをする方では手首や指など、よく使っているところに痛みが出やすいと言えます。
関節痛の原因は?
関節に痛みが生じるのには、さまざまな原因があります。
肥満
肥満気味の方は、体重の負荷がかかって膝などの関節に痛みが出やすくなります。
運動
近年では、健康意識の高まりからウォーキングやランニングなどの運動を始める方が増えています。運動は健康維持に役立ちますが、これまで運動習慣のなかった方が突然運動をすると、筋力不足によって膝をはじめとする関節に衝撃がかかりやすくなり、痛みが生じる恐れがあります。
また、運動のフォームがおかしく不要な負荷がかかっていたり、準備運動をきちんとせずに運動をしたりするのも、関節への負荷が大きくなり痛みの原因になります。
加齢
年齢を重ねるにつれ、関節内の軟骨は弾力を失い、すり減っていくため、関節に負荷がかかりやすくなります。加齢による関節痛が特に出やすいのは膝です。膝の関節痛は50歳前後から起こりやすくなり、60歳以上になると多くの方が発症します。
変形性関節症
変形性関節症は、関節と軟骨周囲の組織が傷つくことで関節が変形し、関節内に水が溜まって腫れたり強い痛みが出たりする疾患です。加齢や体重負荷・運動などによって起きる関節痛が悪化すると、変形性関節症に発展する恐れがあります。
関節内には軟骨が存在し、骨と骨の間で衝撃を吸収するクッションのような役割をしています。しかし、軟骨が弾力を失ってすり減ってしまうと、骨と骨が接するようになって関節が変形し、痛みや腫れを招くのです。
変形性関節症は、どの部位の関節にも起こり得ますが、特に膝関節に多く見られます。膝の変形性関節症になると、膝をピンと伸ばせなくなったり、膝を完全に曲げられなくなったり、正座ができなくなったりすることもあります。
関節リウマチ
関節リウマチは、体のさまざまな関節の膜に炎症が起きる疾患です。悪化すると軟骨や骨が損傷し、機能が損なわれたり関節が変形したりしてしまいます。特に女性に多く、患者の8割程度が女性だとされています。関節リウマチの原因ははっきりと解明されていませんが、体の免疫システムが関係していると考えられます。
痛風
痛風は、体内で過剰に分泌された尿酸が関節内に溜まり、炎症を引き起こす病気です。腫れや発作的な強い痛みが生じます。痛風による関節痛は、体内の尿酸値が低下すれば改善します。
関節が痛いときの対策は?病院への受診目安
病院への受診目安は?
関節が痛む原因は、さまざま考えられます。原因によって治療法も異なり、早期の処置が必要なケースも。適切な治療を受けられるよう、明らかな原因がないのに1週間程度経っても痛みが引かないようであれば整形外科を受診するのが好ましいでしょう。
整形外科では、レントゲンや超音波エコーなどで関節や軟骨・靭帯などに損傷がないかどうか検査します。これらの検査でも不十分な場合は、MRIを撮ることも。また、触診で水が溜まっていないかどうか、曲がる角度が左右でどう違うかなどを診察します。
病院での治療方法は?
検査や診察で関節や軟骨などに損傷が見つかった場合は、原因に合わせた適切な治療を行います。
●変形性関節症の治療
軽度の場合は、痛み止めの内服薬や外用薬・湿布薬などの処方、痛みが出ている関節へのヒアルロン酸注射などを行います。重度の場合は、骨の変形を矯正する手術などの外科的治療を施すことも。
●関節リウマチの治療
抗リウマチ薬の処方が一般的です。外科的手術が行われることもありますが、最近は薬の効能が高くなったため、手術の頻度は減っています。
●痛風の治療
関節痛の原因が痛風であると判明した場合は、痛風そのものの治療を行います。尿酸値を下げるための薬物治療や、尿酸値コントールのための生活指導、痛みや炎症が強い場合は消炎鎮痛薬の処方などが行われます。
関節痛の予防方法
生活習慣・運動習慣を改善する
体型や生活習慣・運動習慣が原因で関節に痛みが生じるのを防ぐためには、日頃から以下の点に留意しましょう。
- 体重を増やしすぎないように気を付ける
- 姿勢を良くする
- 適度な運動を習慣化して筋力の低下を防ぐ
- 運動をする前はしっかり準備運動をする
運動前はしっかりストレッチを
ストレッチなどの準備運動をせずに急に運動をすると、筋肉が硬くなっているせいで関節に衝撃がダイレクトにかかってしまいます。特に冬場は、寒さのせいで筋肉が硬くなりやすいので、運動前にいつも以上に念入りにストレッチでウォームアップをしておく必要があります。
【おすすめのストレッチ方法】
●ふくらはぎの筋肉のストレッチ
つまさきを反らせて、ふくらはぎの筋肉を伸ばしましょう。
●太ももの筋肉のストレッチ
正座の状態から、片足を伸ばして座ります。両手を体の後ろにつき、上半身を後ろに反らしましょう。
※片足が終わったら、もう片方も行います。
●手首のストレッチ
手のひらと手首を反らせて、手首まわりの筋肉を伸ばしましょう。
大事なのは、時間をかけてゆっくり・じわじわと行うこと。なお、こういったストレッチは、運動前はもちろん日課として取り入れるのもおすすめです。
まとめ
寒さによる筋肉の硬直や関節の冷えなど、関節痛が起きやすい・悪化しやすい要因が揃う冬。関節痛は放っておくと慢性的な関節炎に悪化することもあるので、気になる症状が早めに予防対策や適切な治療を受けるようにしましょう。
大阪府済生会吹田病院 整形外科科長(部長) 高宮 尚武
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