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生理前の体調不良。悪化しやすい冬はPMSを知って適切に対処しよう

生理前になると、腰や下腹部が痛い・手足がむくむ・イライラしやすくなる・気分が沈む…という方は多いかと思います。こういった生理前の不調はとても辛いものですが、適切に対処すれば楽になることもあります。今回は、生理前に起こる体調不良やつらい症状の原因や対策・予防法について、産婦人科医の柴田先生に教えていただきました。

柴田 綾子

淀川キリスト教病院 産婦人科医長

2011年3月に群馬大学医学部医学科を卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を経て、2013年4月より淀川キリスト教病院 産婦人科で勤務。2020年4月から淀川キリスト教病院 産婦人科医長を務める。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

淀川キリスト教病院 産婦人科医長 柴田 綾子

生理前の体調不良、その原因はPMS(月経前症候群)かも

生理前の体調不良、その原因はPMS(月経前症候群)かも

●PMSとは

PMSとは、生理の前3~10日間に現れる身体的・精神的な不調症状を指します。人によっては生活や仕事・学業に支障をきたすほど重い症状が出ることもありますが、生理が始まると自然に治ります。

●PMSの原因

PMSの原因には諸説ありますが、生理前の女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌量の変動や、脳のなかの神経伝達物質(セロトニン)の影響が考えられています。

・女性ホルモンの分泌量の変動
女性ホルモンの分泌量の変動

生理前の10日から3日程度は、黄体ホルモン・プロゲステロンの分泌量が急激に増加した後に低下します。この変動がPMSの症状を引き起こすと考えられています。プロゲステロンの変化は、むくみなどの身体症状や、イライラやうつ気分などの心的症状に大きな影響を与えているとされています。

・セロトニン分泌量の影響

セロトニンとは、別名「しあわせホルモン」と呼ばれる脳内分泌物質で、精神の安定に大きく関与するとされています。セロトニンの分泌量や受容体の感受性の変化も、PMSに影響を与えると考えられています。

●PMSを発症しやすい人って?

ストレスが多い方や生理痛がひどい方にPMSの症状が多く、喫煙や飲酒量が多い方はPMSの症状が強くなりやすいことが分かっています。

●PMSは冬になると悪化しやすい?

セロトニンの分泌量は日照時間と関連があるとされています。日照時間が少ない冬場は、セロトニンの分泌量が低下しやすく、PMSの症状が強く現れる可能性はあると言えます。

生理前体調不良・PMSの症状は?

生理前体調不良・PMSの症状は?

PMSの症状や程度は人それぞれ異なりますが、以下のようなものが代表的です。

●体に出やすい症状

  • 手足のむくみ
  • お腹の張り
  • 腹痛
  • 頭痛
  • 胸のはり
  • 腰痛

●心に出やすい症状

  • イライラしやすくなる
  • 怒りやすくなる
  • 気分が落ち込む
  • やる気が出なくなる
  • 眠れなくなる
  • 集中力が低下する
  • 情緒不安定

硬生理前の体調不良・PMSを緩和するための対策

硬生理前の体調不良・PMSを緩和するための対策

●リラックスして過ごせるように予定を調整して

PMSの症状は、ストレスを強く感じているときほど強く出やすいため、症状を緩和するためには心身ともにリラックスして過ごすことが大事です。生理前はなるべく余裕のあるスケジュールにして、睡眠や休息を多めにとってリラックスできるように調整しましょう。また、生理前には大きなイベントや大事な予定を入れないようにするのも良い方法です。

●お酒・タバコは控えて

お酒やタバコは症状を悪化させる原因に。PMSの症状が出ているときは、お酒やタバコを控えましょう。

●痛みがあるときは市販の痛み止めで対応を

頭痛や腰痛・腹痛がつらいときは、市販の痛み止めを用いてください。痛み止めの効果は服用後すぐには出ないので、痛みを感じたらすぐに飲むと良いでしょう。

●むくみにはマッサージや入浴を

PMSの症状として、手足のむくみが出る方は多いかと思います。そんなときは入浴やマッサージがおすすめです。血流が改善し、むくみの軽減につながります。リラックス効果の高いアロマオイルや入浴剤を用いるとなお良いでしょう。

●バストの張りや痛みには、締め付けの少ないブラジャーをチョイスして

生理前はバストが張りやすくなります。バストの張りで痛みや違和感を覚える場合は、ブラジャーをコットン素材の肌にやさしいタイプや、ノンワイヤーブラやスポーツブラなど締め付けないタイプにしましょう。

硬生理前の体調不良・PMSを予防するための方法は?

硬生理前の体調不良・PMSを予防するための方法は?

●症状を記録しておくと対処しやすくなる

PMSの症状は毎回一定ではなく、重い月・軽い月があるものです。症状の現れ方の特徴が分かるように、ご自身の体調をアプリや手帳で記録しておくと良いでしょう。

例えば、「この月は仕事が忙しくてストレスがたまりがちだったから、症状が重かったのかな」「この月はスケジュールにゆとりがあったから、比較的症状が軽かったのかな」などと分析しやすくなります。このようにご自身の症状のパターンが分かると、あらかじめ対処しやすくなるはずです。

●有酸素運動をしよう

有酸素運動は、PMSの予防に効果的とされています。おすすめは、ヨガやウォーキング・ランニング・スイミング。定期的にこういった有酸素運動を行いましょう。なお、定期的な有酸素運動は、更年期症状を軽減させる効果もあると言われています。

●ビタミンやミネラル・カルシウム・マグネシウムを摂ろう

複合炭水化物(パン・めん・豆類・根菜類)などや野菜や果物を積極的に食べ、ビタミンやミネラルを多くとることは、PMSの予防につながります。また、カルシウムやマグネシウムの摂取も症状の改善に効果的だと言われています。食事だけで補いきれない場合は、サプリメントなども上手に利用すると良いでしょう。

症状がひどい場合は、産婦人科への受診を

PMSによって生活や仕事・学業に支障が出るようであれば、一度婦人科を受診することをおすすめします。

病院では、症状に合わせて、痛み止めや漢方・利尿薬(むくみがひどい方の場合)・ 抗精神薬(心的症状が強い方の場合)・排卵を抑える低用量ピルなどを処方しています。

また、生理前の体調不良のすべてがPMSによるものというわけではありません。貧血や風邪・片頭痛・更年期症状・甲状腺機能異常など、ほかの病気が原因のこともあります。そういった意味でも、一度婦人科で検査や診断を受けることをおすすめします。

まとめ

生理前の、腰痛や手足のむくみ・イライラ・気落ち…多くの女性が悩んでいるPMSは上手に対処して改善していきたいものですね。

淀川キリスト教病院 産婦人科医長 柴田 綾子

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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