【感染制御学教授が解説!】家庭内でのウイルス感染を予防する部屋の掃除のポイントとは?
病気・症状と予防
2020年12月24日掲載
空気が乾燥してウイルス感染の危険性が増すこれからの時期、ぜひ知っておきたいのが、家庭内感染を防ぐためのウイルス対策です。家庭内でウイルス感染を防ぐためには、どのような方法があるのでしょうか?
そこで今回は、感染制御学博士であり、感染管理認定看護師の菅原えりさ先生に、家庭内でウイルスが潜みやすい場所、各ポイントの掃除の仕方やコツなどについて解説していただきました。
菅原 えりさ
東京医療保健大学 大学院医療保健学研究科教授
東京医療保健大学大学院感染制御学教授。専門は病院内の感染制御。都内の総合病院で、感染リスクのモニタリングやその低減活動など感染制御業務に従事し、2013年より現職。新型コロナウイルス感染症対策はクルーズ船対応をはじめ、高齢者福祉施設や事業者に対してアドバイスを行っている。
INDEX
ウイルス・菌を減らすための掃除方法とは
●ウイルス対策としての掃除の必要性
ウイルス感染は、ウイルスに触れただけでは起こりません。ウイルス感染は、手指などを介してウイルスが口や鼻から体内に侵入して初めて起こります。掃除によってウイルスを除去する行為は、その前段階である手指への付着を予防する観点で必要だと言えます。
●掃除でウイルス・菌を減らすには
「物理的な拭き取り」と「消毒薬を用いての菌の除去」によって、室内のウイルスや菌を減らす効果が期待できます。
・物理的な拭き取りによる効果
「物理的な拭き取りによる効果」は、布やシートなどを用いて力を加え拭き取ることで、「そこにある何かは取れるだろう」という考えに基づいています。例えばこぼしたジュースや食べかす・ホコリのように目に見えるものであれば分かりやすいですが、菌やウイルスは目には見えません。そのため、拭きとりによって菌やウイルスが除去されたかどうかを確認するのは困難です。しかし、物理的に拭き取ることで拭き取った布の方に菌やウイルスが移動する可能性はあります。
・消毒薬でウイルスや菌を除去する効果
菌やウイルスは消毒薬に浸すことで死滅させることが可能です。ただし、菌やウイルスの種類によって適した薬剤の種類は異なります。(どんなウイルス・菌にどんな消毒液が適しているのかについては後述します。)
●衛生的な環境を保つことは、健康維持のためにも必要不可欠
拭き取りや消毒液によるウイルス・菌の除去効果だけでなく、掃除は健康維持の観点からも欠かせません。例えば、カビだらけの環境は病気を引き起こす原因になります。「汚れをそのままにしておく」「ホコリをそのままにしておく」のは良くありません。衛生的な環境を維持するよう努めましょう。
ウイルス・菌対策に効果が期待できる掃除グッズ
●アルコールシートやウェットティッシュで、拭き取り+除菌を
前項で解説したように、ウイルス・菌の除去には拭き取りと消毒が効果的です。消毒薬が含有されたシート(アルコールシートやウェットティッシュなど)での拭き掃除によって、拭き取りと消毒の二つの効果を狙うことができます。
※ただし、人によって拭き取る力加減は異なるため、拭き取りの効果には差が生じます。また、消毒液を使ったからといって全ての菌を除去できるとは言い切れません。
●ウイルスの種類によって適した消毒薬は異なる
コロナウイルスやインフルエンザウイルスは、アルコールまたは塩素系の消毒薬に弱いという性質があります。対して、冬に流行するノロウイルスは、アルコールでの消毒では効果が薄く、塩素系の消毒薬が有効です。
家の中で特にウイルスが付着しやすい場所と、掃除方法
●ドアノブやスイッチなど、指や手で頻繁に触れる場所
ウイルスがついた手や指で触れた場所には、ウイルスが付着する可能性があります。その意味で、ウイルスが付着しやすいのは、頻繁に触れるドアノブやスイッチなどだと言えます。このほか、生活ルーティーンによって「よく触れる場所」が各人あるかと思います。
このような箇所は、アルコールシートやウェットシートなどでこまめに拭き取り掃除を行いましょう。特に、訪問者や来客など、家族以外の人の出入りがあった場合は入念に。
●トイレ
コロナウイルスに関して言えば、飛沫だけでなく便からウイルスが検出された例が報告されています。その意味で、感染者が使用したトイレには、ウイルスが付着している可能性があると言えます。排便時には、自分では便器の中にしているつもりでも、どうしても周囲に飛び散りが発生します。「こんなところに!」という場所にまで飛び散っている可能性も。
なお、トイレを使用しただけでは感染は起こりません。排泄物から舞い上がる飛散物を吸い込んだり、手に付着した排泄物を無意識に口に運んでしまってウイルスが体内に侵入することで感染します。このような糞口感染の例としてよく知られているのが、ノロウイルス感染症です。
日頃からこまめなトイレ掃除を心がけるとともに、便座や床などは消毒薬を用いたり、アルコールシートで拭き取り掃除を行ったりすると良いでしょう。そして何より、トイレから出たらしっかり手を洗うことが重要です。「手洗い」は、感染伝播を阻止する最後の砦であると覚えておきましょう。
ウイルスや菌を除去したい・・・掃除のコツとポイント
●拭き取りシートは片面だけを使って、すぐに捨てる
拭き取りをした際、ウイルスや菌は拭き取ったシートや布などの方に移ります。そのため、一度使った面を裏返して使用すると、手にウイルスや菌が付着する恐れがあります。「片面だけで捨てるのはもったいない」と思ってしまうかもしれませんが、ウイルス・菌対策のために片面だけを使用してください。また、ウイルスや菌が付着している可能性のあるシートに触れないよう、掃除後はすみやかに捨てましょう。
●掃除用具は清潔に保って
使い捨てのシートであれば問題ありませんが、布や雑巾など繰り返し使う掃除道具の衛生状態には注意しましょう。使用した後は洗剤などでよく洗ってしっかり乾かすことが大切です。
●住人以外の出入りがあったときは、その人が触れた箇所の拭き取り掃除を
工事の人が来たり友人が遊びに来たりした後など、住人以外の人の出入りがあった際は、いつも以上に念入りに掃除を。その人が触れた箇所をアルコールシートやウェットシートで拭き取りましょう。
感染を防ぐために。家庭内でのウイルス感染対策
ウイルスは、口や鼻から体内に侵入して初めて健康に害を及ぼします。ですから、掃除によってウイルスを減らす取り組みを行うとともに重視すべきなのは、「ウイルスを体内に入れないようにすること」です。そのために、以下の対策を行いましょう。
・こまめに手を洗う
手や指についたウイルスを取り除くためには、手洗いが最も有効です。石鹸をよく泡立てて、手のひら・手の甲・指の間・指先・手首までしっかりと洗い、流水でよくすすいでください。
・普段よりも手洗いの頻度を上げて
これまでも、食事の前やトイレの後・外から帰ってきたときに手洗いをしていた方は多いと思いますが、感染症の流行が拡大している時世においては、さらに手洗いの頻度を上げることをおすすめします。
例えば、宅急便を受け取り、荷をほどいた後。宅急便の荷物はたくさんの人の手を介して届きます。その過程でウイルスが付着している可能性も十分考えられます。このように、これまでなら気にしていなかったタイミングでも手洗いを行うことで、感染防止につながります。
・手洗いの後にはアルコール消毒を
手を洗った後は、アルコール消毒液を用いるとより安心です。液を手全体に広げ、乾くまで刷り込んでください。
・室内の換気を
家に誰か人が来た後や、家の中の人の密度が高くなったときは、窓を開けて空気の入れ替えを行いましょう。
・ウイルス接触機会を減らす重要性も、再認識しよう
人との接触を減らすことも、ウイルス感染予防においてはとても重要です。ウイルス感染症の流行が本格化する寒い時期を前に、今一度不要不急の外出は控えるようにしましょう。
まとめ
昨今、ご家庭内でのウイルス感染予防対策は必至事項とも言えます。今回ご紹介した、ウイルスや菌を除去するための掃除を実践するとともに、ウイルスを体内に入れないための予防策を今一度見直してみてくださいね。
東京医療保健大学 大学院医療保健学研究科教授 菅原 えりさ
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。