「オンライン診療」導入院が解説!メリット・デメリットと受診のポイント
病気・症状と予防
2020年12月10日掲載
コロナ禍の影響で導入する医療機関が増えているオンライン診療。
「便利そうだな」と思ってはいるものの、「どんな症状のときに利用できるのか分からない」「どうやって利用したらいいのか分からない」という方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、オンライン診療のやり方、オンライン診療でできることできないこと・オンライン診療を受けるに当たっての心得などについて、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長の黒木春郎先生に教えていただきました。
黒木春郎
医療法人社団 嗣業の会 外房こどもクリニック 院長
日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長。日本医師会「オンライン診療研修に関する検討委員会」 委員。厚労省「オンライン診療の適切な実施に関る指針に関る検討会」構成員。主な著書は『これからの小児科外来 成功の鉄則』(2018年、中外医学社)など。
INDEX
コロナ禍で注目を浴びた「オンライン診療」とは?
● オンライン診療とは
オンライン診療とは、スマホやパソコンなどの情報通信機器を使用したリアルタイム診療のこと。WEBミーティングやビデオ通話のように、画面上で医師と患者が対面して診療を行います。
●オンライン診療は1990年代後半から行われていた
コロナ禍において一躍注目を集めることとなったオンライン診療ですが、すでに1990年代後半からテレビ電話などの活用による離島や僻地を対象とした遠隔診療は行われていました。その後、IT技術の発展を背景に、2015年8月には厚生労働省が「遠隔診療は離島や僻地に限らない」とし、これが実質的なオンライン診療の解禁となりました。そして、2018年には「オンライン診療の適正な実施に関する指針」が示され、本格的な導入が始まりました。
●2020年4月以降、オンライン診療に関する時限的特例措置が実施される
現在、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、オンライン診療の普及が加速しています。この理由のひとつは、2020年4月にコロナ時限的特例措置がとられ、オンライン診療に関する規制が緩和されたことです。これまでオンライン診療が可能な疾患は限られていましたが、2020年4月以降は疾患制限が排除されました。また、初診からの診療も可能になっています。(※1)
(※1)ただし、実際には初診からオンライン診療を実施している医療機関は多くはありません。多くの場合、既存の患者さんの継続治療に対してオンライン診療と外来を組み合わせる形で導入しています。
オンライン診療でできること・できないこと
オンライン診療には、画面を通して診療するという性質上「できること」「できないこと」があります。
●オンライン診療でできること
- 問診:患者に容態をヒアリングすること
- 視診:患者の顔色や表情、皮膚の具合など、様子を見て判断すること
- 薬の処方:診断をもとに医薬品を処方すること
●オンライン診療ではできないこと
- 触診:患者の体に触って診断すること
- 聴診:聴診器などを使って患者の体内の音を聞いて診断すること
- 検査:レントゲンや採血など
- 処置:患者の身体に直接行う治療行為で、薬を塗布する、ガーゼ交換、吸入吸引、その他
オンライン診療を利用できる症状・できない症状
先に述べたようにオンライン診療には「できること」と「できないこと」があるため、症状によってオンライン診療が利用できるケース・できないケースがあります。
●利用できる症状・ケース
・慢性疾患で定期的に診察・処方を受けている場合
例えば、アトピーやニキビなど慢性の皮膚疾患や精神疾患などで定期的に外来診療を受けている方は、定期診療をオンラインに切り替えることが可能。ただし、すべてをオンライン診療に替えるのではなく、外来診療と組み合わせるのが一般的です。
・コロナウイルス感染症が疑われる症状が出ている場合
問診や視診により感染の疑いが濃厚と診断しPCR検査が必要な場合は、検査機関に依頼することができます。
●利用できない症状・ケース
- 重い病気が疑われるケース
- 急性の症状(頭痛や腹痛、呼吸苦、悪心など)
- 処置が必要な症状
- ケガ
上記のように、緊急性の高い病気やケガ、問診や視診だけでは判断できないケースは、オンライン診療に向いていないといえます。
オンライン診療のメリットとは
●医療機関に出向かずに、自宅で診療を受けられる
オンライン診療では、患者さんが直接医療機関に出向く必要がありません。そのため、以下のようなメリットがあります。
・道中や院内での感染のリスクを軽減できる
病院へ行かなくて良いので、道中や院内での感染のリスクを下げることができます。また、自身が感染している場合も他の人に移す心配がなくなります。
・移動時間・待機時間を短縮できる
自宅にいながら診察を受けられるので、病院に通うための時間・病院での待ち時間がなくなります。当然交通費もかかりません。遠方の病院に通っている方や仕事の都合などで通院が難しい方にとっては大きなメリットだと言えるでしょう。
なお、オンライン診療は全国どこからでも受診が可能ではありますが、多くの場合、外来と組み合わせて実施しています。そのため、いざ来院が必要になったときに通える範囲の医療機関であることは重要です。
・医療機関を受診するハードルが下がる
時間と場所の制約が少なく診察を受けられるので、医療機関を受診するハードルが下がります。慢性疾患の場合、通院が途切れると症状が悪化することもありえますが、オンライン診療を取り入れることで受診を継続しやすくなるでしょう。
●新型コロナ感染の疑いがある患者さんをオンライン診療できる
新型コロナ感染の疑いがある患者さんをオンラインで診察できるのは、感染拡大を防ぐ意味でメリットが大きいといえます。なお、オンライン診療で感染が濃厚だと診断した場合は、しかるべき機関に検査を依頼します。
オンライン診療の利用の流れとは?
●一般外来でのオンライン診療の流れ
では、実際にオンライン診療の流れを見てみましょう。(ここでは、黒木先生が院長を務める外房こどもクリニックのオンライン診療の流れをご紹介します)
- 来院して診察を受け、今後の診療はオンラインで可能かどうか相談
- オンライン診療専用システムに登録し、診療を予約する
- 予約時間になったらアプリのビデオチャットを開始、診察を受ける
- 診察終了後、クレジットカードで会計を行う(※2)
- 領収書と処方箋が自宅に郵送される
- 処方箋を受け取ったら調剤薬局に持参し、服薬指導を受けて薬を受け取る(※3)
(※2) 2020年12月現在、オンライン診療の会計はクレジットカードのみのシステムが大多数となっています。
(※3) オンラインでの服薬指導・薬の配送も可能。オンライン対応の調剤薬局であれば、オンラインで服薬指導を受け、薬を自宅に配送してもらうことも可能です。この場合は、医療機関から薬局に直接処方箋が送られるので、診療から薬の受け取りまでをすべてオンラインで済ませられます。ただし、薬の配送には送料がかかること・受け取りの手間があることなどを考えると、自分で処方箋を持って薬局に行った方が良いと感じる方も少なくないようです。ご自身の体調や都合に合わせて選ぶと良いでしょう。
2020年4月から初診からのオンライン診療が可能になってはいますが、初診は来院で診察を受けてもらい、次回からのオンラインへの切り替えが可能かどうか判断しています。また、その後の診療はオンラインと外来を組み合わせて行なっていくのが一般的です。
オンライン診療をスムーズに進めるためのポイント
オンライン診療を受ける際には、以下の点に留意してください。
・顔色がよく見えるよう、明るい場所で行う
影ができないよう、できれば顔の前側にライトを設置してください。
・電波環境の良好な環境で行う
スマホを使用する場合は、Wi-Fi環境での受診をおすすめします。また、電波が安定している場所を選んでください。
・ご自宅など、静かで話がきちんとできる場所で行う
移動中の車内や外の音がうるさい場所のほか、プライバシーが守られない環境は避けましょう。
オンライン診療を実践してみて感じる実用性と、利用者側が心得ておくべきこと
●利用者からの反応は?
現在、オンライン診療の需要は高まっており、利用する患者さんも増加しています。利用者からは「通院が大変だったので自宅にいながら受診できるのはとても助かる」「感染症のリスクがないので安心」といった声が。また、「画面を通じてだと、先生と一対一で接している感が強いので、リラックスしてお話できる」と、オンラインならではの良さを感じている方も多くいます。
なお、厚生省の調査によると、オンライン診療の利用者は小児科が最も多いことがわかっています。利用者からは「病院に行くと子供が泣いたり暴れたりで大変だが、自宅なら落ち着いて話ができる」との声が寄せられています。
●オンライン診療を受けるに当たって、利用者側が留意しておくべきこと
オンライン診療によって医療を受けるハードルが下がり、受診しやすくなったのはとても良いことです。オンライン診療は、患者志向の医療だと言えます。これは言い換えれば、「医療をこれまでよりも手軽に利用できるようになった」ということ。だからこそ、利用者側にもモラルが必要です。「予約した診療をキャンセルしない」「薬だけもらうなどの利用の仕方はしない」など、“医療を受ける”という姿勢を忘れないようにしましょう。
また、これまで医療は医療機関が準備し提供するものでしたが、オンライン診療では通信環境など含め、利用者側にもスムーズな診療を実現するための準備が必要です。オンライン診療を問題なく進めるには、利用者側にも準備や協力が必要であることは理解しておいた方がよいでしょう。
まとめ
2020年4月から、オンライン診療という新しい医療形態が広まりつつあります。感染症のリスクを回避しつつ、これまでより手軽に医療を受けられるというのは、利用者にとっては大きなメリットです。オンライン診療の利用を考えている方は、近隣もしくはかかりつけの医療機関に相談してみると良いでしょう。
医療法人社団 嗣業の会 外房こどもクリニック 院長 黒木春郎
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