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【AGA治療専門の医師が監修】AGA治療の最前線。原因と治療法を解説

薄毛に悩み、病院での治療を検討されている男性は多いかと思います。しかし、具体的にどんな治療が受けられるのか、自分にはどんな治療が適しているのかわからないという方も少なくないのではないでしょうか?

そこで今回は、AGA治療に精通する脇坂長興先生に、AGAのメカニズムや治療法の他、発症リスクの検査方法などについて詳しく教えていただきました。

脇坂 長興

Dクリニック大阪メンズ 院長

1962年生まれ。聖マリアンナ医科大学卒業。
同大学の形成外科で skin rejuvenationを研究。方法論よりも患者様が一番良くなる治療を提供することが形成外科医の使命であると考えている。

日本形成外科学会専門医、麻酔科標榜医、
日本美容医療協会会員、特定非営利活動法人F.M.L.理事、
医療法人 翠奏会理事長
聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学寄附講座講師

Dクリニック大阪メンズ 院長 脇坂 長興

AGAとは? AGAの原因とメカニズム

AGAとは? AGAの原因とメカニズム

●AGAとは

AGAは「Androgenetic Alopecia」の略称で、日本語では「男性型脱毛症」または「壮年性脱毛症」と呼ばれています。思春期以降の男性に見られる薄毛症状のひとつで、前頭部から頭頂部の髪が薄くなっていくのが特徴です。

●AGAは加齢による薄毛とは別物。AGAの原因とメカニズム

AGAは加齢による薄毛とは異なります。加齢による薄毛は、いわば肌の老化現象と同じようなもの。加齢とともに血流や新陳代謝が低下し、新しい細胞が生まれにくくなり、髪の成長が遅くなったり髪自体が細くなったりしていきます。

対してAGAは、「ジヒドロテストステロン」という物質によって発生する症状です。ジヒドロテストステロンは、男性ホルモンの一種である「テストステロン」に「5αリダクターゼ」という還元酵素が結びついて生成される物質。ジヒドロテストステロンが細胞内の「アンドロゲン受容体」という男性ホルモン受容体と結合することで、髪の成長が妨げられ、薄毛を引き起こします。加齢による薄毛と異なり、20代から症状が現れることもあります。

●AGAになると髪の成長サイクルが乱れる

髪の成長サイクル

髪の本来の寿命は2~6年程度。しかしAGAを発症すると、男性ホルモンの作用によって髪の成長サイクルが妨げられ、1年またはそれ以下で抜け落ちてしまいます。約3か月の休止期を経て、髪はまた生えてきますが、今度もまた十分に成長しないまま抜け落ちてしまいます。これを何回も繰り返すうちに、毛根はどんどん弱くなり、髪自体も細く薄くなっていくのです。

目的が「発毛」か「現状維持」かによって、適切な治療は異なる

目的が「発毛」か「現状維持」かによって、適切な治療は異なる

クリニックで行われるAGA治療は、「発毛(新たな髪の成長を促す・髪を太くする)」を目的とするのか、「現状維持(AGAの進行を抑える・抜け毛を予防する)」を目的とするのかによって治療法が分かれます。

●発毛を目的とする場合の治療方法

「発毛」を目的とするならば、AGA治療薬である「ミノキシジル」という薬を処方します。ミノキシジルについての詳細は以下。

【ミノキシジルとは】

ミノキシジルは、発毛を促す効果が認められたAGA治療薬です。細胞を刺激して細胞分裂を促進し、発毛を促します。外用薬と内服薬があります。

・効果の実感について

多くの方が治療開始から3か月程度で何らかの変化を、半年程度で手応えを感じています。(※1)

・どんな人に向いているのか

発毛を目的としている方・頭皮に異常がない方。

・クリニック処方での費用

1か月15,000円から。

・考えられる副作用

むくみ/動悸(どうき)/皮膚のかぶれ。ただし、すべての人に副作用が現れるわけではありません。

(※1)ここでいう「手応え」とは、人によって捉え方が異なります。「進行が止まった」「髪が太くなった」「抜け毛が減った」などさまざまです。また、発毛治療で髪が10代のようにフサフサになるかというと決してそうではないことは知っておきましょう。発毛治療の効果の最大値は、簡単にいえば「同年代の平均程度になる」です。

●現状維持を目的とする場合の治療方法

「現状維持」を目的とするならば、AGAの進行抑制薬である「フィナステリド」や「デュタステリド」という薬を処方します。フィナステリド・デュタステリドの詳細は以下。

【フィナステリドとは】

フィナステリドは、AGAの進行を抑える薬です。前頭~頭頂の毛根に存在する酵素「Ⅱ型5αリダクターゼ」の働きを抑制することで、テストステロンがAGAの原因であるジヒドロテストステロンに変化するのを防ぎます。

・効果の実感について

多くの方が治療開始から半年程度で手応えを感じています。

・どんな人に向いているのか

AGAの進行を抑え、現状維持をしたい方。

・クリニック処方での費用

1か月10,000円ほど。

・考えられる副作用

フィナステリドは、生殖器系の副作用が出ることがあります。臨床試験によると、被験者のうち1%未満で精液量の減少、5%未満で性欲の減退が確認されています。また、精子の減少が見られるという声も。このほか、睾丸痛や蕁麻疹(じんましん)・乳房の肥大・うつ症状といった副作用が現れる方も報告されています。

【デュタステリドとは】

デュタステリドは、AGAの進行を抑える薬です。フィナステリドと同様に5αリダクターゼの働きを抑制することで、テストステロンがジヒドロテストステロンに変化するのを防ぎます。

フィナステリドと異なる点は、フィナステリドが5αリダクターゼのⅡ型のみを抑えるのに対して、デュタステリドはⅠ型とⅡ型両方を抑制する効果を持っています。また、デュタステリドの方が血中での残留時間が長いのも特徴です。

・効果の実感について

多くの方が治療開始から半年程度で手応えを感じています。

・どんな人に向いているのか

AGAの進行を抑え、現状維持をしたい方。

・クリニック処方での費用

1か月12,000円ほど。

・考えられる副作用

デュタステリドもフィナステリドと同程度の生殖器系副作用が出ることがあります。また、睾丸痛や蕁麻疹(じんましん)・乳房の肥大・うつ症状といった副作用が現れる方も報告されています。

●発毛を目的とする治療をするなら、AGA専門クリニックへ

AGA進行抑制薬であるフィナステリドやデュタステリドは、一般的な皮膚科でも取り扱っているところが多くあります。

一方、AGA治療薬であるミノキシジルは皮膚科では取り扱っていないことがほとんどです。発毛目的の治療であればミノキシジルの扱いがあるAGA治療を専門としているクリニックへの受診をおすすめします。

AGA発症リスクの検査も可能

AGA発症リスクの検査も可能

AGA専門クリニックでは、上記のような投薬治療のほか、髪の健康状態を検査したり、AGAの潜在的リスクを検査したりできます。すべての患者に検査を行うわけではありませんが、治療を迷っている方にとっては、治療方針を決めるひとつの指針になるでしょう。検査には以下のようなものがあります。

●髪の健康状態を調べる「ミネラル検査」

髪を1束切って、含まれるミネラルの量を計測します。ミネラルは髪の成長にとって必要不可欠な成分です。不足していると、AGAの進行を加速させる要因にもなりえます。この検査によって、髪はもちろん体の健康状態を確認でき、生活習慣指導や栄養指導を含めたより適切な治療が可能になります。

●AGAの潜在的リスクを調べる「酵素活性検査」と「遺伝子検査」

検査によって、AGAになりやすいか・なりにくいかを調べられます。検査には2種類があります。

1.5αリダクターゼの発現強度を調べるための酵素活性検査

AGAは、男性ホルモン「テストステロン」が毛乳頭に存在する還元酵素「5αリダクターゼ」と結びついて「ジヒドロテストステロン」に変異することから始まります。そのため、「5αリダクターゼ」の発現強度を調べれば、AGAの発症リスクを予想することができます。この検査は毛髪を数本抜いて行います。


2.アンドロゲンに対する感受性を調べるための遺伝子検査

「5αリダクターゼ」によって生成された「ジヒドロテストステロン」が細胞内に存在する「アンドロゲン受容体」と結合すると、毛根の細胞の働きが阻害されAGAを引き起こします。結合するかしないかは「アンドロゲン受容体の感受性の高さ」によって異なります。「感受性が高い方は結合しやすくAGAになりやすい」「低い方は結合しにくくAGAになりにくい」ため、アンドロゲン受容体の感受性を調べることで発症リスクを予測することができますこの検査は、血液検査によって行います。

AGAの進行を防ぐために。生活習慣の改善も大事

AGAの進行を防ぐために。生活習慣の改善も大事

●睡眠不足はAGAの進行を促進する

1日の睡眠時間が5時間以下になると、抜け毛・薄毛の原因になるとされています。なお、この「5時間」は、足し算の5時間でも問題ありません。AGAの進行を止めるだけでいえば、電車での仮眠や昼寝・うとうと状態も含めて5時間以上睡眠をとっていれば問題ありません。

●タバコは本数に関係なくAGAの敵

タバコを吸うと、新陳代謝や血流が悪化するため、髪を成長させる毛乳頭に栄養が届きにくくなり、抜け毛や薄毛の原因に。タバコは控えるようにしましょう。

●タンパク質をしっかり摂ろう

髪の毛は主にタンパク質からできています。良質なタンパク質を摂取するのは髪の健康には欠かせません。また、亜鉛の摂取も推奨されています。実際にクリニックでも亜鉛の栄養剤を補助薬として処方することがあります。

まとめ

特に20代から30代の若い世代の方の中には、「薄毛は気になっているが病院には行きづらい」と感じている方も多いかもしれません。しかし、AGA治療は一昔前よりも一般的になってきており、ハードルも低くなっています。

また、今回ご紹介したように、患者の要望にあわせたさまざまな治療法、AGA発症リスクの検査方法があります。薄毛にお悩みの方はもちろん、AGAのリスクが気になる方・市販の育毛剤や養毛剤でいまいち効果を実感できない方は、ぜひ一度クリニックに相談してみてください。

Dクリニック大阪メンズ 院長 脇坂 長興

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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