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室内でも熱中症に注意!症状・予防・応急処置方法

本格的に暑くなるこの時期になると、毎年熱中症にかかる方が多くなります。熱中症というと炎天下の屋外のイメージが強いかもしれませんが、室内での発症も少なくありません。2020年以降は特に、ご自宅で過ごす時間が増えるかと思いますので、室内での熱中症が心配です。また、マスクによる熱中症の増加を指摘する声も上がっています。

そこで今回は、室内での熱中症の注意ポイントや熱中症のサイン・予防対策・応急処置のポイントなどについて、腎臓内科医の林大祐先生に教えていただきました。

林 大祐

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター/腎臓内科部長/

2002年大阪大学医学部卒業後、大阪府立急性期総合医療センター、大阪大学医学部附属病院などに勤務。2020年より現職に。日本内科学会・総合内科専門医、日本内科学会・認定医、腎臓専門医。

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター/腎臓内科部長/林 大祐

室内でも発生する熱中症。重症化すると死に至ることも

室内でも発生する熱中症。重症化すると死に至ることも

●熱中症の定義

熱中症は、過剰な発汗によって体の水分が失われ、体温の調節機能が効かなくなって生じる症状の総称です。めまいやふらつき・体温の上昇・頭痛・嘔吐などの症状が見られ、重症化すると多臓器不全に陥って死に至ることもあります。

●熱中症患者は増加傾向にある

近年、地球の温暖化の影響と見られる気温の上昇により、熱中症患者は増えています。総務省消防庁のデータによると、1993年以前の熱中症患者は年平均73人でしたが、1994年以降は年平均490人に増加しています。特に2010年以降は増加の割合が大きく、2017年には50,000人以上が熱中症で病院に搬送されています。

●熱中症は室内でも起こる

夏の屋外で起こりやすい熱中症ですが、室内での発症も決して少なくはありません。外気温が高くなれば、当然室内の温度も上昇するからです。環境庁の調べによると、高齢者の熱中症は家庭内での発症が多く、死亡例の38.8%を占めるとのこと。もちろん、高齢者のみならず若い人でも室内での熱中症は起こりえます。出かけるときだけでなく、室内にいるときも熱中症対策に気を配りましょう。

熱中症のサイン・症状

熱中症のサイン・症状

熱中症になると、以下のような症状が現れます。

●軽度の熱中症で起こる症状

めまい・ふらつき・立ちくらみ・こむらがえり(※)・大量の発汗
(※)ふくらはぎの筋肉が異常に収縮して、痙攣(けいれん)を起こすこと

●中度の熱中症で起こる症状

体温の急激な上昇・頭痛・嘔吐・倦怠感

●重度の熱中症で起こる症状

意識障害・けいれん・多臓器不全

室内での熱中症が起こりやすい場所・タイミング

室内での熱中症が起こりやすい場所・タイミング

では、室内での熱中症はどのような場所・タイミングで起きやすいのでしょうか。

●こんな場所は熱中症に注意
・浴室

熱中症が起きやすいのは、高温多湿な環境下。そのため、室温も湿度も高く通気性も良くない浴室は、最も注意すべき場所といえます。また、入浴中は発汗によって体が脱水しやすいためリスクが高まります。

・洗面所

洗面所も熱中症のリスクが高い場所です。浴室とつながっていて湿度が上がりやすく、また、狭いペースに洗濯機などの電化製品があるため室温も上がりやすいからです。

・直射日光の当たる場所

リビングやキッチンなどでも、直射日光があたる場所や日当たりが良い場所は温度が上がりやすいため、注意が必要です。

・一戸建ての2階部分

一戸建て住宅の場合、1階よりも2階の方が熱が溜まりやすく、気温や湿度が上がりやすいとされています。

●こんなタイミングの熱中症に注意
・お風呂上がり

入浴後は、発汗によって体の水分が失われて脱水状態に陥りやすいため、熱中症のリスクが高くなります。

・寝ているとき

睡眠中は動かなくても汗をたくさんかいています。特に「冷房は苦手」などの理由で室温・湿度の高い環境で寝ていると、発汗により体の水分が失われ続けるため、熱中症のリスクは高くなります。

●マスクをすると熱中症のリスクが高まるかは不明

2020年はコロナウイルス感染症の影響で、室内でもマスクをつける機会が多いかと思います。それに伴いマスクによる熱中症を懸念視する報道も。実際のところ、マスクをしていると熱中症になりやすいかどうかに関する研究はまだ不十分です。しかし、マスクをしていると喉が乾いても感じにくい・体に熱がこもりやすいと考えられます。例年以上に水分補給をこまめにするなど、熱中症対策への意識を持つことが大切です。

室内での熱中症の予防対策

室内での熱中症の予防対策

室内での熱中症を防ぐためには、以下のポイントに留意しましょう。

●入浴時の留意点

・お風呂に入る前
・上がった後にしっかりと水分補給をする
・夏場の長風呂は避ける
・入浴中も換気扇をつけたり窓を開けたりして、浴室内の空気を循環させる

●室内で過ごすときの留意点

・直射日光が当たらないようにカーテンで遮光する
・室温が28℃を超えないようにエアコンなどで調節する (※ただし室温を低くしすぎるのは避けて。外に出たときに外気温との差で体調を崩す恐れがあります。)
・湿度は60%程度になるよう、除湿機やエアコンで調節する (※湿度が70%を超えると汗をかきづらくなるので熱中症のリスクが高くなります。)
・室内で風を循環させ、室温・湿度を下げるために、窓を開けて換気をする
・サーキュレーターや扇風機を活用する

●就寝時の留意点

・冷房や扇風機をつけて、室温・湿度が高すぎる環境で寝ないようにする
・就寝前に水分補給をする

●脱水を防ぐための水分補給のしかた

「喉が乾いた」と感じるとき、すでに体は脱水気味です。喉が乾いていなくても水分を取りましょう。人間の体は大量の水分を一気に吸収できないので、一度に大量に飲むのではなく、少しずつこまめに飲むことが大切です。

なお、スポーツドリンクは脱水を防ぐのに必要な塩分なども含まれており、水分補給に適していますが、糖分も多く含まれているため飲みすぎると糖尿病のリスクが高まります。飲みすぎには注意しましょう。

●気づかないうちに熱中症になることも。油断は禁物

軽度の脱水は自覚しにくいため、気づかないうちに熱中症になっている恐れがあります。例えばお風呂上り軽い立ちくらみや喉の乾きを感じる方は多いと思いますが、「いつもそうだから」と油断すると危険です。また、特に寝たきりの高齢者や小さな子どものように体調の異変を自分で訴えられない場合、周りの人が注意深く見てあげることが大切です。

熱中症の応急処置方法

熱中症の応急処置方法

ご家族や身近な方(またはご自身)に熱中症の疑いがあるときは、以下のような対応をしましょう。

●軽度の熱中症の場合

めまいやふらつき・立ちくらみなど、軽度の症状の場合は以下の対応を。

・体を冷やす

太い血管が通っている場所(太ももの付け根や脇の下)を氷やアイスパックなどで冷やしましょう。

・水分補給をさせる

合わせて水分補給をさせましょう。脱水を防ぐには水分だけでなく塩分も必要なため、水よりも経口補水液が適しています。

・涼しいところに移動させる

冷房の効いている場所や、屋外であれば日陰などの涼しい場所に移動させましょう。

・きつい服は脱がせる

体を締め付けるようなきつい服は脱がせましょう。また、ベルトやボタンなど締め付けのあるものも外します。

●医療機関を受診する目安

話しかけても返事がない・ぼーっとしているなど、意識障害が見られる場合は救急車を呼びましょう。軽度の熱中症であれば上記の対応で回復することがほとんどですが、意識障害が出ている場合は一刻も早い治療が必要です。

まとめ

熱中症は気づかないうちにかかり、重症化すると死に至ることもある怖い症状です。例年だんだんと夏の気温は上昇傾向にあり、熱中症のリスクも高まってきています。十分な対策をし、健やかに夏を乗り切りましょう。

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター/腎臓内科部長/林 大祐

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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