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胸が痛い・心臓がチクチク…考えられる病気と原因

「胸が痛い」と一口に言っても、痛みの種類・部位・程度・頻度はさまざま。神経痛や逆流性食道炎から気胸・心筋梗塞・狭心症まで多くの原因が考えられます。中には早急な治療が必要なケースも。

そこで今回は、循環器内科医の稲田司先生に、胸の痛みの考えられる原因・それぞれの特徴などについて教えていただきました。

稲田 司

大阪赤十字病院 循環器内科・不整脈内科主任部長兼救急科部副部長

京都大学医学部医学科卒業。平成8年より大阪赤十字病院に勤務。心臓血管センター、救命救急センター、集中治療部などを経て、平成31年1月より現職。専門分野は虚血性心疾患・心筋症・慢性心不全・肺高血圧症など。

狭心症や心筋梗塞…心臓の重大疾患による胸の痛み

●狭心症や心筋梗塞が起きるメカニズム

胸の痛みを感じたときに多くの人が心配するのは、「心臓の病気なのでは?」という点かと思います。胸の痛みを伴う心臓の病気として代表的なのは、狭心症や心筋梗塞です。そこでまずは、狭心症や心筋梗塞がなぜ起こるのか、そのメカニズムについてご紹介します。

心臓には3つの大きな動脈(冠動脈/かんどうみゃく)が流れており、心筋(心臓を動かすポンプのような役割をする筋肉)に栄養を送る大切な役割をしています。しかし、加齢とともに冠動脈内部にはコレステロールや脂肪分が蓄積されていきます。この蓄積されたコレステロールや脂肪分は、食生活や生活習慣の影響を受けて動脈硬化(どうみゃくこうか)へと発展するリスクをはらんでいます。動脈硬化の状態になると血管壁に炎症が起こり血管内は狭くなり、血液が通りづらくなります。そこで起きるのが狭心症や心筋梗塞といった病気です。

【狭心症】

動脈硬化によって血管が狭くなると、心筋組織に送り込まれる血液量に限界が生じ、心筋の酸素需要が増加して心筋は酸素不足に陥ります。その際に生じる症状を狭心症と呼びます。


【心筋梗塞】

動脈硬化に陥った血管に血栓が詰まると、血管が閉塞し血流が途絶えてしまいます。その結果、心筋組織が壊死します。この状態を心筋梗塞と呼びます。

●狭心症の胸痛の特徴:労作時に痛みが出現、安静にすれば概ね15分以内に消えていく

【狭心症による胸痛の特徴】

  • 歩いたり走ったり階段を登ったりといった「労作時」に生じる
  • その後安静にしていれば概ね15分以内におさまる
  • 痛みが出る部位は胸だけとは限らない!前胸部・あご・歯・肩・みぞおち・腕などに出ることも
  • 痛みの感じ方は人それぞれ

このほか、息切れ・動悸・呼吸困難・めまい・冷や汗などが生じることもあります。

【狭心症のその他の特徴】

  • 60代以降の人に多い
  • 狭心症は男性に圧倒的に多い
  • 月経がある年代の女性はなりにくい(女性ホルモンが動脈硬化を防ぐ役割をするため)
  • 閉経以降の女性の発症率は男性と変わらない
  • 胸痛を伴わないケースも。特に糖尿病の方は痛みが出にくい傾向がある

なお、狭心症の中には「不安定狭心症」といって、労作時ばかりでなく安静時にまで起こるものもあります。これは心筋梗塞の前触れであり、早急な治療が必要です。

●心筋梗塞の胸痛の特徴:突発的に生じる、死を予感させるほどの強烈な痛み

【心筋梗塞による胸痛の特徴】

  • 今まで経験したことのないような激しく突発的な胸の痛み
  • 背中や肩・首などにも痛みが拡散する
  • 激しい痛みが30分程度続く 

このほか、呼吸困難・意識障害・吐き気・冷や汗などが生じることもあります。

【心筋梗塞のその他の特徴】

  • 労作時・安静時限らず起きる
  • 起床後の時間帯(朝6時~10時)に比較的多い
  • 女性の場合、いきなり心筋梗塞にはならず先行して不安定狭心症を発症することが多い
  • 男性の場合、初発で心筋梗塞にかかることが多い

息を吸うと心臓に痛み+風邪症状…心膜炎(しんまくえん)の可能性

もうひとつ胸痛を伴う心臓の病気として挙げられるのが、心膜炎(しんまくえん)です。

私たちの心臓は、心膜と呼ばれる2層の膜に包まれています。そして、この膜と膜の間には心膜腔(しんまくくう)と呼ばれる隙間があり、そこには心臓が動くときの摩擦を防ぐ液(心膜液)が入っています。心膜炎とは、心膜に炎症が生じ、心膜液が過剰に溜まってしまった状態のこと。

 心膜炎の症状として挙げられるのは、息を吸うときに強まる心臓の痛み。また、喉の痛みや咳・発熱・下痢・嘔吐など、風邪によく似た症状も出ます。

息を吸うと胸痛+発熱・呼吸困難…胸膜炎(きょうまくえん)の可能性

胸膜炎とは、肺の外側を覆う胸膜に炎症が起きる病気です。胸膜炎にかかると、息を吸うときに前胸部にピリピリとした痛みが生じます。呼吸困難や発熱をともなうことも。

心臓付近の浅い部位がチクチク痛む…神経痛の可能性

胸の表面がチクチク痛む・「ここが痛い」と指をさせるくらい明確に痛い場所が分かる……このような場合、神経痛が疑われます。心臓は自律神経の支配下のもとに動いている臓器です。そのため、ストレスや不安・緊張・疲れなどによって自律神経が乱れやすくなっていると、その影響として心臓に痛みが出ることもあるのです。

神経痛であれば命に関わることはほとんどなく、次第に症状は消えていきます。ただし、症状が頻発したり長く続いたりするようであれば、他の疾患が疑われます。念のため病院で検査を受けてください。

呼吸困難を伴う突然の胸の痛み…気胸(ききょう)の可能性

気胸とは、胸郭(きょうかく)の中に空気が溜まってしまう症状です。なんの前触れもなく突然肺に穴が空くこともあります。気胸になると息を吸っても肺が広がりにくくなり、呼吸が困難に。また、強い胸の痛みを伴います。

気胸には、突発性自然気胸と二次性自然気胸の2種類があります。前者は背が高い痩せ型の若い男性に多く、後者は肺に持病を持っている人や高齢者に多い疾患です。

胸のつかえ・重苦しさ・圧迫痛…逆流性食道炎の可能性

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで食道の粘膜に炎症が起きる病気です。胸の圧迫感・重苦しさを訴えて来院する人の中には、逆流性食道炎が原因のケースも少なくありません。逆流性食道炎では、胸の圧迫感やつかえの他、慢性的な胸焼けや胃もたれ・食後や歯磨き時の吐き気・喉の違和感・咳などが現れます。

▶逆流性食道炎についての詳しい情報は、こちらをお読みください。

まとめ:心臓や胸の痛みが気になっている方は、早めに病院へ

「胸の痛み」と一口に言ってもその原因は多岐にわたります。ここまで考えられうる原因をいくつかご紹介しましたが、一般の方が痛みの種類や部位・出方から自己判断するのは危険です。特に狭心症や心筋梗塞のような心臓の病気は、治療が遅れると取り返しがつかない事態になることも。気になる症状がある方は一度循環器科を受診し、医師による検査や診察を受けましょう。

大阪赤十字病院 循環器内科・不整脈内科主任部長兼救急科部副部長 稲田 司

大阪赤十字病院 URL:https://www.osaka-med.jrc.or.jp/index.html

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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