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頭が締め付けられるような痛み…緊張型頭痛の特徴・対処法

誰もが経験する頭痛。一口に頭痛と言ってもさまざまな症状・原因が考えられます。今回取り上げるのは、「頭を締め付けられるような鈍い痛み」が特徴の「緊張型頭痛」。頭痛の中でも最も多い症状です。そんな緊張型頭痛の症状や他の頭痛との見分け方・病院での治療方法・セルフケアなどについて、神経内科医の中隆先生に教えてもらいました。

中隆(なか たかし)

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 副院長

1984年大阪大学医学部卒。広島県の国立呉病院(現:呉医療センター)にて研修後、大阪大学第2内科、大阪府立病院(現:大阪急性期・総合医療センター)を経て、1997年東大阪市立中央病院へ着任。移転・改称により、2016年より現職に。神経内科として変性疾患・脳血管障害などの器質的疾患や頭痛・てんかんなどの機能性疾患の診療にあたる傍ら、医学研究センター長・臨床研究センター長を兼任し、臨床研修や内科専攻医の責任者としての業務を行っている。

緊張型頭痛の症状と特徴。片頭痛との違いは?

●緊張型頭痛は、他の疾患を原因としない「一次性頭痛」

緊張型頭痛についてご説明する前に、まずは頭痛には「一次性頭痛」と「二次性頭痛」の2種類があることを知っておきましょう。それぞれの特徴は以下です。

【一次性頭痛】

疾患を原因としない頭痛。

【二次性頭痛】

くも膜下出血や脳梗塞・脳腫瘍・髄膜炎などの疾患が原因で起きる頭痛。

今回取り上げる緊張型頭痛は、一次性頭痛に分類されます。つまり緊張型頭痛は、二次性頭痛のようにすぐさま命をおびやかす可能性のある“危険な頭痛”というわけではないのです。しかし、人によっては痛みが大きなストレスになったり、クオリティ・オブ・ライフを下げる原因になったりすることもあります。

●緊張型頭痛の症状

緊張型頭痛では、以下のような症状が見られます。ただし、「全てには当てはまらないから緊張型頭痛ではない」というわけではありません。

【緊張型頭痛の特徴】
  • 頭が締め付けられる・圧迫されるような痛みである
  • 頭痛の持続時間は、30分から7日間程度である
  • 頭の両側が痛くなる(どちらか一方ではない)
  • 痛みの程度は軽度から中程度である(我慢できないほどの痛みではない)
  • 体を動かしたからといって痛みが強くなることはない
  • 悪心やおう吐はない
  • 光過敏や音過敏はない、またはどちらか一方しかない

 

● 緊張型頭痛と片頭痛の見分け方

緊張型頭痛と並んで一次性頭痛に分類されるのが、片頭痛です。以下のような特徴があります。

【片頭痛の特徴】
  • ズキンズキンと脈打つような痛みである
  • 頭の片側が痛む(両側が痛むケースもある)
  • 痛みの程度は強い(仕事を休んだり予定をキャンセルしたりするほど)
  • 体を動かすと痛みが強くなる
  • 痛みでおう吐することがある
  • 痛みに周期性がある(強くなったりおさまったりを繰り返す)
  • 光過敏や音過敏がある

緊張型頭痛と片頭痛はどちらも一次性頭痛ですが、比較すると両者の違いが分かると思います。特に、痛みの出方・体を動かしたときの痛みの増し方・痛みの程度などに差異が見られます。

●二次性頭痛との見分け方

くも膜下出血や脳梗塞・脳腫瘍・髄膜炎などの症状として起きる二次性頭痛は、ほとんどのケースで緊張型頭痛や片頭痛とは様子が異なります。今までに経験したことのないような激烈な痛み・徐々に悪化していく持続的な痛みが特徴です。頭痛と同時に意識障害や言語障害・体の麻痺などが出ることもあります。

緊張型頭痛の誘因は、生活習慣の中に潜んでいる

●緊張型頭痛が生じる仕組み

緊張型頭痛が起きる正確なメカニズムは、まだはっきりとは解明されていません。ひとつの有力な説としては、中枢神経(※1)や三叉神経(※2)が刺激に対して過敏に反応し痛みを感じやすくなるのではと考えられています。

※1 中枢神経とは
多数の神経細胞が集まって大きなまとまりになったもの。反射や運動・感覚・呼吸など、体のあらゆる動きをコントロールしている。

※2 三叉神経とは
顔の感覚(痛み・熱い・冷たい・かゆい・触れた など)を脳に伝える神経のこと。

●緊張型頭痛は、首や肩・背中の筋肉のコリ・血行不良とも深い関係が

このほか、首や肩・背中などの筋肉の緊張やコリ・血流の悪さとも関係があると考えられます。そのため、緊張型頭痛を生じさせる要因・悪化させる要因は、筋肉の緊張や血流悪化を招くような生活習慣や姿勢にあると言えます。

【緊張型頭痛を引き起こす要因】
  • 運動不足
  • 体の冷え
  • 姿勢の悪さ
  • 長時間のパソコン・スマホ

緊張型頭痛の治療方法とは。予防治療もできる

●危険な二次性頭痛の疑いを晴らすために、病院で検査を

前述したとおり、頭痛にはさまざまな種類があります。「緊張型頭痛や片頭痛だと思っていたら、実は脳疾患の症状だった」というケースも。このような事態を防ぐために、慢性的な頭痛や深刻な頭痛がある方は、一度脳神経内科などで診察やMRI検査・CT検査などを受けましょう。

●つらい緊張型頭痛は、専門医の診察・治療を受けるのも選択肢のひとつ

緊張型頭痛は、二次性頭痛のように背後に重篤な脳疾患が隠れている“危険な頭痛”というわけではありません。そのため、病院によっては緊張型頭痛の治療はないがしろにされてしまったり、ご本人も「我慢するしかない」と思い込んでしまったりしているケースが少なくありません。しかし、たとえ命をおびやかすような頭痛でなくても、頻繁に頭痛を感じるのはつらいものです。緊張型頭痛で悩んでいる方は、頭痛に関する見識が深く、治療にも積極的な頭痛専門医への受診をおすすめします。お住まいの地域の頭痛専門医は以下のURLから確認いただけます。

▶日本頭痛学会 認定頭痛専門医一覧 https://www.jhsnet.net/ichiran.html#大阪府

●緊張型頭痛に対する治療は、問診が重要

緊張型頭痛の場合、MRIやCT検査をしても特に異常は見つかりません。そこで重要になるのが問診です。緊張型頭痛に対する治療に積極的な病院では、問診で患者の話を丁寧に紐解くことで頭痛の特徴やパターンを見つけ、有効な治療法を検討します。

●緊張型頭痛の治療は、急性期治療と予防治療の2軸

緊張型頭痛の治療には、急性期治療と予防治療があります。

【急性期治療】
痛みを抑えるために鎮痛剤の処方などを行います。

【予防治療】
慢性的な緊張型頭痛の患者には、予防薬として抗うつ剤を主体とした薬の処方することがあります。あわせて、運動療法や理学療法・生活指導なども行われています。

緊張型頭痛のセルフ対処法。予防ケアと応急処置

病院での治療とともに、ご自身でできる予防ケア・対症ケアもあります。毎日の生活の中で、以下のポイントに留意してみてください。

【予防ケア】
  • 運動不足にならないようにする
  • 長時間のスマホ・パソコンを控える
  • 体を温めて血行を良くする
  • 冬場は薄くて軽い衣類を選ぶ
  • できるだけ重いものを持たないようにする

●緊張型頭痛・片頭痛がつらいとき、自分でできる応急処置

緊張型頭痛の症状が出ているときは、肩や首・頭の付け根などを温めましょう。ホットタオルを置いたり、ゆっくりお風呂に入ったりするといいでしょう。筋肉をゆるめ、血行を改善すると痛みが和らぎやすくなります。なお、片頭痛の症状が出ているときは冷やした方が痛みは治まりやすくなります。

まとめ

緊張型頭痛は誰にでも起こりうる一般的な頭痛です。しかし、慢性化している方や痛みを感じやすい方にとっては深刻な悩みかと思います。緊張型頭痛でつらい思いをしている方は、専門医の元での治療を検討してみてはいかがでしょうか。また、「頭痛の原因を知りたい」「脳疾患があるのではないかと不安だ」という方も、一度病院で診察や検査を受けることをおすすめします。

市立東大阪医療センター 副院長 中隆(なか たかし)

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター URL: https://www.higashiosaka-mc.jp/

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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