【脳神経内科医監修】気になって眠れない!むずむず脚症候群の原因と治し方
病気・症状と予防
2019年04月18日掲載
「ベッドに入ると脚がむずむずしてきて、眠れないほどの不快症状を感じる」
「ちょっと動かすとマシになるけど、横になった瞬間に再発する」
悩んでいる方が意外と多い「むずむず脚症候群」。その原因は脚のむくみや筋肉疲労ではなく、実は神経伝達物質や鉄欠乏性貧血にあると言われています。そのため、病院で治療改善が可能な病気でもあります。
そこで今回は、あまり知られていないむずむず脚症候群の原因や対処法・治療法について、脳神経内科の髙橋牧郎先生に教えてもらいました。
髙橋 牧郎
大阪赤十字病院 脳神経内科主任部長
京都大学医学部医学科卒業後、さまざまな総合病院、国内外の医科大学での研究・勤務を経て、現在は大阪赤十字病院の脳神経内科主任部長を務める。専門分野は、脳神経内科全般・パーキンソン病・認知症・頭痛・老年医学・脳卒中など。
INDEX
むずむず脚症候群とは
●むずむず脚症候群の症状
むずむず脚症候群とは、寝入りばなに脚を無性に動かしたくなる衝動や脚に虫がはうような感覚・ピリピリ感を覚える症状を指します。別名ではウィリアム・エクボム症候群やレストレスレッグス症候群・RLSとも呼ばれています。
一般的には布団に入って眠りにつくまでの間に症状が出ますが、酷くなると日中の安静時に生じることもあります。
●むずむず脚症候群は中高年に多い?
実は日本人の2~5%程度がむずむず脚症候群を自覚していると言われています。年齢はバラバラですが、比較的中高年に多く見られます。また、女性の方がやや多い傾向にあります。
●むずむず脚症候群に似た病気
むずむず脚症候群と似ているのが、周期性四肢運動障害です。睡眠中に脚のひきつけや蹴るような運動が繰り返し起こる病気です。むずむず脚症候群が寝入りばなに出るのに対して、周期性四肢運動障害は深い眠りに入っている「ノンレム睡眠時」に多く見られます。
むずむず脚症候群の原因
むずむず脚症候群の明確な原因は分かっていません。ここでは、有力視されている説をご紹介します。
●原因1:神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン)の機能低下
脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの機能低下は、むずむず脚症候群の原因のひとつとされています。
セロトニンやドーパミンは、痛みやかゆみに対する脳の知覚を制御する役割を持っています。しかしこれらの働きが低下すると、脳は刺激に対して敏感に反応するようになります。いわば知覚過敏のような状態になるのです。そのため、例えば「布団が脚にかかる」「風が脚にふれる」などのちょっとした刺激にも過剰反応を起こし、むずむず感や刺激感を覚えるのだと考えられています。
・パーキンソン病患者には、むずむず脚症候群の発生率が高い
パーキンソン病の患者には、むずむず脚症候群の症状が見られます。パーキンソン病は、ドーパミンの分泌量減少によって起きる病気です。このことも、神経伝達物質の減少や機能低下がむずむず脚症候群の原因だとする説を裏付けていると言えます。
・抗うつ剤の副作用としてむずむず脚症候群が生じることも
抗うつ剤の副作用として、むずむず脚症候群が生じることがあります。抗うつ剤にはセロトニンの分泌を促したり、神経細胞内への再取り込みを抑制したりする作用があります。それが原因で疼痛閾値を制御するセロトニンのバランスが崩れ、むずむず脚症候群を引き起こすと考えられています。
●原因2:鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血も、むずむず脚症候群の原因のひとつだと考えられています。鉄欠乏性貧血とは、体内の貯蔵鉄が不足している状態を指します。血中のフェリチン(※)濃度がしばしば低下します。月経過多、月経子宮内膜症の人や妊娠中の人や人工透析を受けている人・慢性腎不全の人などは鉄欠乏性貧血になりやすいため、むずむず脚症候群が起きやすいと言えます。
※フェリチンとは 鉄結合性タンパク質の一種。細胞内で鉄と結合して鉄を保存し、必要なときに鉄を放出する役割をしている。
実は保険治療が受けられる!むずむず脚症候群の治療について
●むずむず脚症候群の治療は脳神経内科で
脚に不快なむずむず感がある際、「脚の不調だから整形外科?」「皮膚がピリピリするから皮膚科?」などと考える方が多いかもしれません。しかし先にもお話したように、むずむず脚症候群の原因のひとつは脳の神経伝達物質の調節障害・機能低下だと考えられています。その分野に明るい脳神経内科を受診することをおすすめします。
●むずむず脚症候群は、保険適用で治療が受けられる
病院の治療では、まずはドーパミン受容体拮抗薬で症状を改善していきます。ドーパミン受容体拮抗薬とはドーパミンの作用を強めるお薬のことで、プラミペキソールという飲み薬とロチゴチンという貼り薬があります。これらの処方は健康保険の適用範囲内です。
なお、ドーパミン受容体拮抗薬で芳しい効果が見られなかったり、お薬に慣れて効果が薄れてきたりした際には、必要に応じて別の投薬に切り替えることもあります。
眠れない夜はどうしたらいい? むずむず脚症候群の応急処置方法
脚のむずむず感を抑えるには病院で処方されたお薬が効果的ですが、応急処置としては脚を軽く動かしたりマッサージしたりするのもいいでしょう。
なおむずむず脚症候群の人の中には、睡眠障害を併発している人もいます。睡眠障害になると、布団に入っても『脚がむずむずする→眠れない→余計に脚の不快感が気になる』というループに陥ってしまいます。それを解消するためにも、障害を抱える方は睡眠薬を服用するのも選択肢のひとつです。
むずむず脚症候群をセルフケアで予防改善するには?
●生活面で気をつけるべきこと
むずむず脚症候群になると、布団に入っても寝付きが悪く、そのうち脚がむずむずしてきて余計に眠れなくなるループに陥ります。そのループを断つためにも寝付きを悪くさせるような行為、例えばカフェインの摂りすぎ・寝酒・寝る直前のスマホやパソコンはやめましょう。布団に入ったらすぐに入眠し、脚がむずむずしてくる隙を与えないことが大事です。
●食事面で気をつけるべきこと
むずむず脚症候群の原因のひとつに、鉄欠乏性貧血が挙げられます。そのため、鉄欠乏性貧血があれば鉄分を積極的に摂取するのは予防改善に効果的だと言えます。
まとめ
むずむず脚症候群は命に関わる病気ではありませんが、症状が頻繁に起きると睡眠不足になって健康面にも精神面にも負担がかかってしまいます。
脚のむずむずに悩んでいる方は、一度脳神経内科を受診し、適切な治療を受けてみてはいかがでしょうか。
大阪赤十字病院 脳神経内科主任部長 髙橋 牧郎
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。