女性も男性も、まだならすぐに風疹の予防接種を。症状・対策の基礎知識【内科医監修】
病気・症状と予防
2018年11月15日掲載
近年、大人の風疹(ふうしん)患者が全国的に増えています。その原因のひとつは、ワクチン接種を受けていない世代が存在するから。
風疹は重症化しにくいため、命をおびやかすような病気ではありません。しかし、妊婦さんが風疹にかかると胎児に深刻な影響を与える恐れがあります。
そこで今回は、風疹の症状や予防法・人にうつさない方法について、内科医の上嶋弾先生に詳しくうかがいました。男性にこそ、風疹にかからないように注意してほしい理由もご説明します。
上嶋 弾 先生
上嶋内科・消化器科クリニック
京都大学医学部卒。京都大学医学部附属病院内科、北野病院内科、三菱京都病院消化器内科の研修後、「北野病院消化器内科 副部長」「阪和住吉総合病院消化器センター 部長」など、数々のポストを経て2015年に上嶋内科消化器科クリニックを開設。豊富な経験と消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医など、さまざまな専門性を活かした高いレベルの医療サービスを提供している。
INDEX
風疹はどうやってうつる?症状は?
●風疹の感染経路と症状
風疹は、風疹ウイルスが口や鼻などの粘膜に直接触れることで感染します。感染力は強いものの、30~50%の人は感染しても発症しません。また、発症したとしても症状は軽度です。まれに脳炎になる方がいますが、重症化することはほとんどありません。
ウイルスの潜伏期間は2~3週間。耳の裏や後頭部のリンパの腫れ・発熱・全身にできる薄いぶつぶつ(紅斑丘疹/こうはんきゅうしん)が代表的な症状です。
●麻疹(はしか)との違いは?
風疹と似た症状を持つ病気に、麻疹があります。症状はほぼ同じで、違いは症状があらわれる順番です。風疹は発熱・リンパの腫れ・ぶつぶつが同時期に発生するのに対し、麻疹は感染から約10日後に発熱し、約14日後にぶつぶつがあらわれます。また、ぶつぶつの色にも違いが見られ風疹の方が、色が薄い傾向があります。
●風疹と麻疹の違いまとめ
■共通
- 発熱、リンパの腫れ、全身のぶつぶつが発生
■違い
- 風疹・・ぶつぶつが他症状と同時期に発生、ぶつぶつの色は薄い
- 麻疹・・・感染から10日後に発熱、その後ぶつぶつが時間差で発生、ぶつぶつの色は濃い
風疹の予防接種は済んでいますか?世代ごとの摂取状況
●風疹の予防方法は?
風疹の予防には、ワクチンを使った予防接種が効果的です。弱毒生ワクチンと呼ばれる病原性を弱めたウイルスを注射し、体内に風疹の抗体を作ります。予防接種を受けるだけで、風疹を95%以上予防できるとされています。
1回の予防接種で約9割の方に抗体ができますが、まれにできない人もいます。そのため、現在では2回予防接種を受けるようになっています。
●世代によってワクチンを受けていない人も!接種状況は?
風疹のワクチンは、世代によって接種状況が異なります。昭和54年(1979年)4月1日以前は、風疹の予防接種は女性のみが対象でした。男性は対象外だったため、現在(2018年)38歳より年齢が上の男性は、風疹の抗体を持っていない可能性があります。
また、予防接種が2回になったのは平成2年(1990年)4月1日から。それ以前に生まれた28歳より上の世代は、男女ともに1回しか予防接種を受けておらず、予防するのに抗体の量が十分ではない可能性があります。
●ワクチン接種の状況まとめ
・昭和54年(1979年)4月1日以前に生まれた方・・・女性のみ接種
※男性は1回も予防接種を受けていないため、抗体がない可能性が高い
・平成2年(1990年)4月1日以前に生まれた方・・・男女とも1回のみ接種
※男女ともに1回しか予防接種を受けていないため、人によっては抗体が不十分なことがある
妊婦さんが風疹にかかると危険なのはなぜ?
風疹は、妊婦さんがかかると非常に危険な病気です。初期妊娠期(妊娠から約3カ月以内)に風疹にかかると、母体を通じて胎児も感染し、先天性風疹症候群を発症する恐れがあるからです。
先天性風疹症候群にかかると、流産・死産・早産の可能性が高くなります。また、先天的な障害(先天性白内障・先天性難聴・心臓の障害)を持つリスクも上昇します。
●女性が予防接種を受ける際の注意点
女性は予防接種を受けるタイミングに注意をしましょう。風疹の予防接種には、弱毒生ワクチン(病原性を薄めたウイルス)を利用します。ワクチンで体内に風疹の抗体を作るため、予防接種を受けると風疹に感染したのと同じ状態になります。
つまり、妊娠発覚後に予防接種を受けると、胎児が先天性風疹症候群にかかるリスクが生じるのです。風疹の予防接種を受ける際は、必ず妊娠の有無を確認しましょう。予防接種後、ウイルスが完全に抜けるまで約1カ月かかります。予防接種から1カ月間は、妊娠しない注意も必要です。
なお、子供の頃に予防接種を済ませている方が再度ワクチン接種をしても、抗体が増えるだけです。体への影響はないので感染が心配な方は、念のために再度予防接種を受けておくと安心です。
男性にこそ風疹に気をつけてほしい、その理由
ご説明したとおり、風疹は妊婦さん・胎児に影響することがあります。これは世間的にも広く知られているため、女性は風疹予防に比較的理解があり、妊娠前にワクチン接種をする方も増えています。一方で、男性の風疹への意識は、高いとは言えないという現状もあります。「妊婦さん(女性)がかかることはない」という事実が、そこまで男性に関心を持たせないのかもしれません。
しかし、男性が風疹にかかるということは、近くにいる妊婦さんに感染させる可能性があるということでもあります。男性だからと言って、無視して良い病気ではないのです。特に現在(2018年)、38歳以上の男性は、風疹にかかる可能性をはらんでいます。38歳以上の男性ですと、会社勤めであれば同僚に妊娠中の女性がいたり、ご兄弟や親族に妊婦さんもいたりする可能性がある世代でしょう。もう少し年齢を重ねた方なら、娘さんが妊娠をする可能性もあり得ます。
そんな状況下で、ご自身が感染源となるのは避けたいですよね。だから男性も風疹をひとごとだとは思わず、周囲の妊婦さん・胎児を守るためにも、ぜひ一度意識を改めてみていただきたいと思います。風疹はワクチン接種で防げる病気なので、もしもワクチン接種をしていないのであれば、今からでも医療機関などで接種をしましょう。
風疹にかかってしまったときの治療法・対処法
●病院での治療方法
風疹の治療は基本的に対症療法です。熱が高い場合は解熱剤、のどが痛いときは炎症を抑えるための薬を出すなど、症状を緩和させながらウイルスがいなくなるのを待ちます。
●療養中は人にうつさないよう注意!
風疹の療養中は、周りの人にうつさないよう細心の注意を。うがい・手洗い・マスクの着用を徹底しましょう。周りに妊娠中・妊娠を希望している女性がいる場合は、できる限り接触を控えてください。
まとめ
風疹は、世代によって抗体を持っている方とそうでない方がいる感染症です。症状としては軽いものの、妊婦さんが感染すると、生まれてくるお子さんに大きなリスクが生じます。 「もしかしたら予防接種を受けていないかも」という方は、ご自身のためにも、周りのためにも、早めに予防接種を受けることをおすすめします。
上嶋内科・消化器科クリニック院長 上嶋 弾
上嶋内科・消化器科クリニック URL:http://www.ueshima-clinic.jp/
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