痛風の痛みってどれくらい辛いの?医師に教わる原因・治療法・予防法
病気・症状と予防
2018年06月07日掲載
「痛風になると、足が痛くなるんだろうな」、とふんわり想像できる方は多いかと思います。
しかし、実際の痛風の痛みは多くの方の想像を超えるもので、「息ができないほどの激しい痛み」と表現されることもあります。
そこで今回は、痛風の原因や治療方法などについて、大阪暁明館病院検診センター長であり、兵庫医科大学名誉教授でもある山本徹也先生に教えていただきました。
山本 徹也
大阪暁明館病院 検診センター長 / 兵庫医科大学 名誉教授
長年、プリン代謝疾患と脂質代謝疾患を中心に診療・研究をしている。西日本における研究をけん引するだけではなく積極的にメディアにも登場し、テレビなどでも解説として活躍中。
INDEX
痛風って何のこと?
●プリン体と尿酸について
痛風とは何かを語る前に、「プリン体」「尿酸」という2つのキーワードをご説明します。
・プリン体
「プリン体」とはプリンと呼ばれる構造式(プリン環)を持った物質のことで、体内で合成されます。体内生成される以外にも、プリン体を含む食品を摂取することでも体内に取り込まれます。
・尿酸
プリン体が体内で代謝されると、最終産物の尿酸が形成されます。プリン体は肝臓を含めた種々の組織で代謝されるのですが、肝臓以外で生じた中間代謝物も最終的には肝臓に運ばれて、そこで尿酸に変換されます。
●痛風の正体とは
体内で生成された尿酸は、主に腎臓から排出されます。しかし、過剰に生じると尿酸は体内に蓄積し、尿酸塩結晶として結晶化します。そして、体のさまざまな部位(主に皮下・関節内・腎臓)に沈着します。その尿酸塩結晶が皮下に沈着すると痛風結節、関節内に沈着して発作を起こすと痛風関節炎と呼ばれ、激痛が生じます。これが、「痛風」の正体です。
なお、腎臓に沈着した場合は痛風腎と呼ばれ、腎不全の原因になります。
尿酸が結晶化するのは血清尿酸値が溶解度7.0mg/dlを超える場合で、このような状態を「高尿酸血症」と呼びます。
痛風の症状はどこに出る?どんな症状が出る?
尿酸塩結晶が沈着する部位は、手足の関節や皮下・腎臓など。最も多いのが足の親指の関節内への結晶沈着で、この結晶が痛風発作を出現させます。このような沈着箇所の傾向から、「痛風になると足に激痛が走る」というイメージが世間に浸透しているのかもしれません。
痛みは発症してから24時間ほどでピークを迎え、その後2週間ほどをかけてゆっくりと鎮静していきます。人によっては、痛みの発作が出る12時間ほど前に、足がピリピリしたり違和感を覚えたりすることもあります。
注意が必要なのが腎臓に沈着するケースです。腎臓に尿酸の結晶がたまると、腎不全などの重大な病気を招く恐れもあります。このほか、皮下や骨に沈着して痛風結節ができることもあります。これらのケースは、痛風ではなく腫瘍と間違われることがまれにあります。
エネルギッシュで活動的な人ほど危ない?痛風になりやすいのはどんな人?
●痛風予備軍チェックリスト
日本における痛風の患者数は、今や100万人以上。健康診断などで尿酸値が高いと指摘された方はもちろん、以下の項目に複数当てはまる方は痛風予備軍である恐れがあります。
● 30代~50代の男性
● エネルギッシュで活動的である
● 肥満体質である
● お酒を日常的にたくさん飲む
● 早食いである
● 大食いである
● 肉類を好んで食べる
● 汗っかきである
● 激しい運動をしている
● 家族に痛風の人がいる
●痛風になりやすいのはどんな人?
・痛風患者は、圧倒的に男性が多い
痛風は男性のほうが圧倒的になりやすく、90%以上の患者さんが男性です。
女性が痛風になりにくい理由は、女性ホルモン・エストロゲンには尿酸を尿に排出する働きがあるから。そのため若い女性が痛風になる可能性は低いのですが、閉経後にエストロゲンの分泌が減少すると女性も尿酸が体内に蓄積して、痛風になることがあります。
・活動的な30~50代男性がなりやすい
エネルギッシュで活動的な人や激しい運動をしている人は、エネルギー代謝や新陳代謝が激しいため、尿酸の生成量が多くなりやすい傾向にあります。 痛風が30代から50代の男性に多いのも、この年代が仕事でもプライベートでも活動的だからです。
・肥満体質の人がなりやすい
肥満体質で中性脂肪が多い人は、尿酸が排出されにくい体質になっています。また、肥満体質の人は過食傾向がみられるため、食べものや飲みものによるプリン体摂取量が過剰になりがち。特に、プリン体の含有量が多い肉類・魚類を好む人や、お酒をたくさん飲む人は注意が必要です。
・汗っかきの人がなりやすい
尿酸値は、脱水気味になっているときにも上昇します。そのため、汗っかきの方は高尿酸血症になりやすく、痛風の症状が出やすいと言えます。
・家族に痛風患者がいる場合も要注意
実は痛風の遺伝要因は、10~15%程度。「尿中に尿酸を排泄する量が低下する」という遺伝的要因があるのですが、残りは環境要因が占めています。つまり、「親が痛風持ちだから自分も痛風になる」とは、必ずしも言えないのです。
しかし実際は、痛風の親を持つ子供は痛風になりやすい傾向があります。例えば、家族の誰かが痛風なのであれば、その家族もまた、痛風になりやすい食習慣・生活習慣をしている可能性が高いと考えられます。遺伝的要因に、このような環境要因が加わると痛風が発症する可能性があります。
食生活・生活習慣で痛風予防・改善する方法はあるの?
●控えたほうが良い食べもの・飲みもの
・プリン体を多く含む食品
痛風の発作を引き起こす元となるプリン体は、私たちがよく口にする食べもの・飲みものにも含まれています。特にプリン体を多く含むのは、肉類や魚類です。 ほかにも気をつけたほうがいい食品は、
● レバー
● ウニ
● めんたいこ
● オイルサーディン
などもプリン体が多い食品としてよく知られています。意外なところでは、魚の干物や青魚の皮なども該当します。これらを食べすぎないように気をつけましょう。
・ショ糖や果糖
ショ糖や果糖は体内で尿酸をつくる働きをします。甘い飲料水や果物、お菓子も摂りすぎないように注意が必要です。
・アルコール飲料
アルコール飲料の飲み過ぎもNGです。
ビールにプリン体が多く含まれていることはよく知られていますが、ウィスキー・焼酎にも注意をしましょう。実際のところ、ウィスキーや焼酎に含まれるプリン体は微量ですが、体内でアルコールを分解する過程でプリン分解が促進します。そのためどんな種類のお酒でも、たくさん飲めば体内でプリン分解が促進し、尿酸が過剰に産生されます。
1日の摂取量上限は、アルコール20gを目安に。ビールなら500ml・ウィスキーなら60ml・日本酒なら1合半程度にとどめましょう。
このほか、早食いや大食いの習慣を改め、野菜中心の食事をゆっくり丁寧に食べることも大切です。
●痛風予防・改善のために役立つ食べもの・飲みものは?
反対に、痛風予防のために積極的に摂取したい食べもの・飲みものもあります。 例えば、乳製品やコーヒーがおすすめです。乳製品には尿酸の排出を促す働きが、コーヒーには尿酸の生成を抑制する働きが期待できます。
このほか、脱水症状を防いだり排尿で尿酸を体外に出しやすくしたりするために、水をたくさん飲むように心がけましょう。1日2リットルが目安です。
●痛風を予防するための生活習慣
エネルギーを一気に消耗して、尿酸の生成を促すような激しい運動は控えめにしましょう。
例えば、ベンチプレスや100mダッシュなど、息を止めて行うような無酸素運動は尿酸値上昇の原因になります。代わりに、ウォーキングや軽いジョギングといった有酸素運動を取り入れましょう。
それでも痛風になってしまったときの治療法は?
●痛風の発作が出たらどうすればいい?
痛風と思われる症状が出たら、内科を受診しましょう。一般的な病院に行けば、まずは痛みを抑える痛み止めが処方されるので、痛み止めを服用しながらできるだけ安静にすることを心がけましょう。安静にしていれば、痛みは2週間程度で収まっていきます。その間に無理に動かそうとすると、痛みはなかなか引きません。
●尿酸値を下げるための治療
病院では痛風の痛みが引いた後に、尿酸値を下げるための投薬治療も行っています。
ここで重要なのは、医師の指導にしたがって、薬をきちんと飲み続けるということです。痛みが引いたからと自己判断で内服をやめないようにしましょう。
同時に、痛風を予防するための食習慣・生活習慣を続けることもとても大切です。薬で一時的に尿酸値が下がったとしても、食習慣や生活習慣を変えなければ何度も発作を繰り返しかねません。高尿酸血症の治療では、投薬よりもむしろ食習慣・生活習慣の改善が肝心だということを覚えておきましょう。
まとめ
痛風の原因である高尿酸血症は、働き盛りのエネルギッシュで元気な男性ほどかかる恐れがある病気です。すでに痛風発作を起こしたことがある方はもちろん、痛風予備軍チェックリストで該当する項目が多かった方は、1日も早く予防改善のための食生活・生活習慣を始めましょう。
大阪暁明館病院 検診センター長 / 兵庫医科大学 名誉教授 山本 徹也
大阪暁明館病院 URL: http://www.gyoumeikan.or.jp/
兵庫県医科大学 URL: http://www.hyo-med.ac.jp/
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。