足がつったときの対処法って?知っておきたい原因と治療方法【漢方医学から学ぶ】
病気・症状と予防
2018年05月24日掲載
ふくらはぎの筋肉がピーンと張って激痛が走る、こむら返り。
こむら返りという言葉になじみがない方も、「足がつった状態」と聞くとイメージしやすいかと思います。こむら返りの痛みはしばらくすると引いていきますが、症状が出ているときの辛さは相当なもの。いざというときのために、できるだけ早く治す方法や予防法を知っておくと安心です。
今回は薬日本堂漢方スクール大阪校の講師・薬剤師の齋藤友香理さんに、こむら返りをできるだけ早く解消する方法や予防法をお話していただきました。「なぜ漢方なの?」と思う方もいるかもしれませんが、実はこむら返りを治すために漢方を用いるのはメジャーな治療法なのです。
そこで本記事では、漢方医学の観点からこむら返りの症状や原因を解説するとともに、改善方法や日常でできる予防法をご紹介します。
齋藤友香理
薬日本堂漢方スクール 薬剤師
東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂に入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務める。講師となった現在は、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。
こむら返りの症状は?
こむら返りとは、突然ふくらはぎの筋肉が張って急激な痛みが生じる症状のこと。
急に足の筋肉がカチカチに固まって激痛が走り、ほんのちょっぴり動かすのさえ困難になります。発症するタイミングに規則性はありませんが、睡眠中や運動中などに起こりやすいとされています。 激痛の割に1~2分で痛みは鎮まりますが、クセになると頻繁に発症を繰り返すことも。
年配の方に生じやすいと言われていますが、若い女性や妊娠中の女性もよくこむら返りになると言われています。
漢方医学が考えるこむら返りの原因は?
漢方医学では、血液や血液の働き・血液によって運ばれる栄養分のことを総称して「血(けつ)」と呼びます。そして、こむら返りの原因はこの血が不足している状態=「血虚(けっきょ)」にあると考えられています。
かみ砕いて言うと、こむら返りが生じる原因は、血液不足・血流の滞り・それらに伴う栄養不足にあるということです。
血液は飲食で摂取した栄養を全身に運んで、人間の健康な生命活動をサポートしています。しかし、血液が不足したり血流が悪くなったりすると、体に十分な栄養が行き届かなくなります。そうすると体は、血液と栄養不足のサインとして、さまざまな不調を発症します。 こむら返りは「体に血液(栄養)が不足していますよ」という体のサインのひとつなのです。
例えば加齢によって血液を作る機能が衰えたり、過剰なダイエット・月経で血液不足になったり、妊娠中に赤ちゃんに血液・栄養を届けるために自分の分が不足してしまったり……これらは全てこむら返りの原因となりえます。
他にも、冷えて血行が悪くなったとき・急な運動をして過度に栄養を消費したときなどにも、こむら返りが起きやすくなります。水泳中にこむら返りになる方が多いのは、水温で体が冷えて血行不良になっているところに急激な運動が加わるという、こむら返りが起こる条件が揃っているからだと考えられます。
こむら返りになりやすい体質とは?
以下のような症状に該当する方は、こむら返りになりやすいと言えるでしょう。
● 顔色が青白い
● 肌にツヤがない
● カサカサしている
● 爪がもろい
● 視力が低下している、目がかすむ、ドライアイ
● 生理が遅れがち、経血の量が少ない
● 動悸やめまい、立ちくらみがすることがある
● 物忘れしやすい
これらの不調は、いずれも血が不足しているサイン。つまり、こむら返りになりやすい方の特徴です。
こむら返りを予防するための方法は?
漢方医学では、こむら返りを予防するためには血を補い・体に巡らせることが大切だと考えています。 具体的には、以下の点に気をつけてみてください。
・夜更かしをしない
睡眠時間は、体の修復タイム。しっかりと睡眠をとらないと、血を作ったり巡らせたりする力も低下してしまいます。社会人になるとなかなか難しいとは思いますが、22時~26時の間は就寝するのが理想的です。
・体を冷やさないようにする
体が過度に冷えると、血の巡りが悪くなります。1年を通じて、体の外側からも内側からも体を冷やさないように気をつけましょう。服装やひざ掛けで体温調整をするのはもちろん、温かい飲みものを積極的に摂って、体内から温めるのもおすすめです。
・目や頭の使いすぎに注意
パソコンやスマホを長時間使うことも血を消耗し、巡りを悪くします。適度に休憩をとって、目と脳を休めましょう。
こむら返りを早く治すには?
こむら返りの症状は、だいたい1~2分で治まっていきます。自然に治るのを待っていても問題はありませんが、少しでも早く痛みや不快感を緩和したい方は硬直しているふくらはぎをそっと触ったりさすったりしてみてください。だんだん硬直が緩んできたら、親指から順番にゆっくりと指を動かしていきましょう。
頻繁にこむら返りになるという方は、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方薬を用意しておくと安心です。この漢方薬は硬直した筋肉を緩める働きをする薬で、即効性があります。
ただし、副作用としてむくみ脱力感が出ることがありますので、使用頻度には注意しましょう。妊婦さんも服用できますが、使用前に必ずかかりつけの産婦人科医に相談するようにしてください。
まとめ
こむら返りになりやすい方は、今回ご紹介した方法で、「血(血液や栄養素)の不足」を改善するよう心がけてみましょう。血(けつ)を補う・巡らせることで、こむら返りだけでなくその他の心身の不調や悩みの解決にも役立つはずです。
薬日本堂漢方スクール 薬剤師 齋藤 友香理
薬日本堂漢方スクール URL: https://www.kampo-school.com/
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。