麻疹(はしか)の原因や症状・予防法・治療法を医師に聞く。大人と妊婦さんは要注意!
病気・症状と予防
2018年05月10日掲載
2018年5月現在、日本で麻疹(はしか)が流行の兆しをみせています。麻疹の感染力は非常に高く、大人(特に妊婦さん)は注意が必要です。
今回は、麻疹の原因や症状・予防接種など、意外と知らない麻疹の知識を医師の安井先生に教えていただきました。
安井 潔
医療法人弘清会 四ツ橋診療所 院長
「地域に密着した医療」をモットーに活動する、四ツ橋診療所の院長。慢性の病気や生活習慣病などの予防はもちろんのこと、アンチエイジング(抗加齢予防医学)にも力をいれている。
INDEX
麻疹ってどんな病気?症状は?
●麻疹とは?
麻疹とは、麻疹ウイルスが体内に侵入することによって引き起こされる感染症です。
感染者の咳やくしゃみなどの飛まつを媒介した感染のほか、空気感染に気をつけなければなりません。感染力が非常に高いため、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症します。
●麻疹の症状
麻疹ウイルスの潜伏期間は、10日から12日程度。麻疹にかかると以下のような症状が出ます。
・感染初期
初期段階では鼻水やくしゃみ・38~39℃の高熱、そして口内(頬の粘膜部分)に白い斑点(コプリック斑)が生じます。コプリック斑が現れる以外の症状は、風邪とよく似ています。
・感染中期~後期
初期症状が2~3日続くと、少し熱が下がります。しかし、約半日後に再び39℃以上の高熱が出て、全身に赤い発疹(ほっしん)が現れることがあります。発疹が出てから3~4日で熱は下がり、発疹も1週間から10日ほどで消えます。
大人の麻疹はなぜ怖い?
●はしかは感染力が非常に高い
麻疹の怖いところは、高い感染力にあります。 最も感染力が強いのは、感染初期段階。しかも初期症状は風邪とよく似ているため、感染者自身が麻疹とは気づかずに会社や学校に行ってしまい、周囲にうつしてしまうケースがありえます。
●重症化すると合併症の危険も
麻疹が重症化すると、中耳炎やクループ(喉の炎症)・肺炎、まれに脳炎といった合併症のリスクが生じます。お年寄りや免疫力が弱い方・体力がない方は、特に注意が必要です。
●妊婦さんは特に要注意
妊婦さんが麻疹にかかると、早産や流産を起こす危険性があります。
予防接種を受けたはず……なのに大人がはしかにかかるのはなぜ?
●予防接種を1回しか受けていない人もいるから
平成3年以降、麻疹の予防接種は2回受けることが義務付けられています。
1歳になった時点で1回目を、小学校入学前の1年間で2回目を受けるのが一般的で、2回の予防接種で体内に抗体ができる方がほとんどです。
しかし、昭和52年から平成2年以前生まれの方(現在20代後半〜30代後半の人)の中には、予防接種を1回しか受けていない方がいます。1回しか受けていないからと言って、必ずしも抗体ができない訳ではありません。しかし、2回予防接種をした場合に比べてみると、1回の予防接種でできる抗体は不十分な可能性が高いと言えます。また、1回の予防接種の場合、時間経過とともに抗体が減少することも。このような背景から、この世代にあたる方は麻疹に感染する可能性があるのです。
●そもそも予防接種を受けていない人もいるから
昭和52年以前生まれの方の幼少期には、麻疹の予防接種が行われていませんでした。子供の頃に自然感染している方は免疫ができていますが、そうでない方は感染のリスクがあります。
●抗体は永続的に存在しないから
麻疹の予防接種を2回していても、抗体は永続的に体内に存在するとは限りません。そのため、予防接種を2回経験した方も、まれに感染することがあります。
麻疹にかからないためには?
●マスク・うがい・手洗いを過信しない
麻疹ウイルスは非常に感染力が高く、空気感染もするため、マスク・うがい・手洗いのみでは予防できません。
●予防接種を受ける
麻疹の感染を防ぐために最も効果的なのは、予防接種です。大人になってからも予防接種を受けることはできます。
「予防接種を2回しているかどうかわからない」「身近な地域で麻疹が流行していて不安だ」という方は、まずはご自身が麻疹ウイルスの抗体を持っているかどうか、病院で血液検査をして確認するといいでしょう。
特に、妊娠中に麻疹に感染すると早産や流産などのリスクが高まるため、近い将来妊娠を望む女性は一度検査を受けて、必要に応じて予防接種を受けることを積極的に検討してください。妊娠しているときは予防接種を受けることはできないので、妊娠前に早めの対策をしておくことが大切です。
なお、予防接種によって抗体ができるまでの期間は約2週間です。
●人混みを避ける
「妊娠中で予防接種が受けられない」「何らかの理由で予防接種が受けるのが難しい」という場合はできるだけ外出を避け、人混みに近づかないようにしましょう。
麻疹にかかってしまったときの治療法・対処法は?
●病院での治療方法
麻疹治療では、熱などのつらい症状を軽減するための解熱剤の処方や、合併症に対する治療を行います。高齢者や衰弱が激しい方には「ガンマグロブリン」という特効薬を用いることもありますが、この薬は費用が高く、扱っていない医療機関も多いため、ほとんどの方は自宅療養を指導されるでしょう。
●家ではどう過ごせばいい?気をつけることは?
自宅療養する際は、人にうつさないようにすることが重要です。
同居人の中に免疫を持っていない方がいる場合は、できるだけ接触しないように。仕事は、熱が完全に下がってから3~4日は休むようにしてください。学校に通う子供が感染した場合は、学校保健安全法に基づいて、解熱後3日まで出席停止となります。
このほか、脱水症を防ぐために水分をたくさん摂り、体力を低下させないよう安静にしましょう。重症化・長期化を防ぐ効果が期待できます。
まとめ
大人や妊婦さんがかかると、合併症や早産・流産など重大なリスクを伴う恐れもある麻疹。
2018年に入ってからも、沖縄をはじめ愛知県などで麻疹の感染が広がっています。不安を感じる方は、ぜひ一度医療機関で免疫の有無を検査し、必要に応じて予防接種を受けるなどの対策を検討してください。
四ツ橋診療所 院長 安井 潔
医療法人弘清会 四ツ橋診療所 URL: http://www.yotsubashi-cl.com/
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。