ウイルス性イボの原因・治療法は?間違われやすい病気も
病気・症状と予防
2020年01月09日掲載
ある日突然顔や首・指などにポツンとできるイボ。実はイボの原因の多くがウイルスだとご存知ですか? 今回は、ウイルス性イボの症状や原因・治療法などを皮膚科医の猿喰浩子先生に教えてもらいました。また、ウイルス性のイボと混同しやすい、加齢性のイボやタコ・ウオノメなどとの見分け方についてもご紹介します。
猿喰浩子(さるばん ひろこ)
地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 皮膚科部長・医務局長
山口大学医学部卒業後、大手前病院や大阪警察病院・関西労災病院などに勤務。現在は、市立東大阪医療センター皮膚科部長・医務局長を務める。専門はアレルギー性皮膚疾患や乾癬(かんせん)。
ウイルス性イボとは? 原因と種類別の特徴
●ウイルス性イボの定義
ウイルス性イボは、皮膚または粘膜の基底細胞(※1)にヒト乳頭腫ウイルスが感染して生じる良性腫瘍です。ウイルスの型は200種類以上あり、感染したウイルスの型によって症状が異なります。
※1基底細胞 : 表皮の最下層にある細胞
●イボの症状はウイルスの種類で異なる。代表的な3つ
【尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)】
できやすい部位:顔・手指・ひざ・足の裏・手のひら 特徴:表面がザラザラで肌色・褐色
大きさ:3mm~1cmほど
痛み・かゆみ:基本的に無症状だがつまむと痛む
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)は、ウイルス性イボの中で最も一般的な種類です。顔や手足などさまざまな場所にできます。ウイルスに対する免疫力の低い子供に多い症状ですが、大人でも、ステロイド剤や抗がん剤の治療やHIV感染などによって免疫力が低下しているとできることがあります。
【扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)】
できやすい部位:顔・手の甲・腕など
特徴:平べったく盛り上がっている・褐色 大きさ:3mm~5mmほど
痛み・かゆみ:基本的に無症状だがかゆみが出ることもある 扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)は、顔や手の甲などにできる平べったい形のイボです。単発でできるケースもありますが、多発するケースもあります。また、若い女性にできやすい傾向があります。
【尖圭(せんけい)コンジローマ】
できやすい部位:外陰部・肛門周辺
特徴:先がとがっている・多発するとカリフラワー状になる
大きさ:1mm~3mm程度
痛み・かゆみ:悪化すると痛みやかゆみをともなう
尖圭(せんけい)コンジローマは、性交渉を通じて感染するため性病のひとつに位置づけられています。ウイルス性イボは基本的に健康な皮膚・粘膜では発症しませんが、性器や肛門周辺の皮膚や粘膜は傷がつきやすいため、感染者と性交渉を行うと感染する可能性があります。なお、尖圭コンジローマのウイルスの一部は、子宮頸がんのリスクファクターになると考えられています。
ウイルス性イボはどんなときにできやすい?発症のメカニズム
●ウイルス性イボは、免疫力低下や皮膚の傷から感染し発症しやすい
尋常性疣贅や扁平疣贅・尖圭コンジローマなどのウイルスに感染しても、正常な免疫力を持ち、健康な皮膚や粘膜であれば、基本的には発症しません。しかし、体の免疫力が低下しウイルスに対する抵抗力が落ちていたり、皮膚や粘膜が傷ついていてそこからウイルスが入り込んだりすると、発症しやすくなります。
●ウイルス性イボは、皮膚荒れ・傷のある人・小さな子供にうつりやすい
「ウイルス性イボは触ったらうつるか」というと、決してそうではありません。ただし、触れた部分に傷があったり体の免疫力が落ちていたりすると、うつる可能性はあります。そのため、アトピー性皮膚炎患者のように皮膚がカサカサしていたり荒れていたりする人は、うつりやすいと言えます。また、免疫ができていない小さな子供も同様です。
なお、前述したように尖圭コンジローマの場合は、尋常性疣贅や扁平疣贅にくらべて接触でうつる可能性が高いため、注意が必要です。
ウイルス性イボの除去・治療方法
●ウイルス性イボの病院での除去・治療方法
ウイルス性イボへの治療で最もスタンダードなのは、液体窒素で凍らせて除去する凍結療法です。健康保険の適用外ですが、レーザーで焼く方法などもあります。また、角質を柔らかくするための軟膏やウイルスを殺菌する塗り薬の処方も。肌の保湿剤を出されることもあります。飲み薬としては、肌荒れやイボ取りに効果的とされる漢方薬・ヨクイニンの処方が一般的です。ウイルス性イボに対する有効な抗ウイルス薬は今のところありません。
なお、いずれの治療でも一回で完治することはほとんどありません。凍結療法を中心に、塗り薬・飲み薬を併用し、根気強く治療していきます。
●ウイルス性イボは放置すると悪化する恐れも
ウイルス性イボを放置していると、感染範囲が広くなっていく恐れが。また、単発ではなく多発して重なり合っている場合にも、ウイルスが増殖して悪化する可能性があります。このほか、尖圭コンジローマウイルスのうち16型と呼ばれるものは、子宮頸がんのリスクファクターになると言われています。
こういった観点から、ウイルス性イボにかかったら病院でしっかり治療することをおすすめします。
ウイルス性イボと間違われやすい皮膚疾患
ウイルス性イボをしっかり治すには病院で治療するのが一番です。しかし、ウイルス性イボには見た目が似ていて間違われやすい病変がいくつもあります。ウイルス性イボを見逃さないためにも、下記の症状について知っておきましょう。
●伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)/ 水イボ
伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)は、1~2mm程度の光沢のあるイボができる病変です。水ぶくれのように見えることから、俗に水イボとも呼ばれています。ウイルスが皮膚の表面から侵入することで感染します。発生箇所は全身で、免疫力が低下していたり皮膚に傷があったりすると接触によって発症しやすくなります。ただし、重症化することはほとんどなく、自然治癒でも6カ月~1年程度で完治します。
●スキンタッグ / 中年イボ
スキンタッグは、中年イボという俗称があることからも分かるように中高年にできやすいイボです。大きさは1~3mm程度で色は褐色、皮膚面から飛び出したような形状をしています。首やわきの下・胸・まぶたなど、皮膚が薄い場所にできやすい傾向があります。ウイルス性ではないため、放っておいても特に問題はありません。ただし、衣服でこすれたり触ったりすると炎症を起こす恐れもあります。
●脂漏性角化症 (しろうせいかっかしょう) / 老人性イボ
脂漏性角化症は、皮膚の老化が原因で生じる良性腫瘍です。色は褐色から黒色で、大きさは5mmから1cmほど。発生箇所は全身。表面がザラザラしているものからツルツルしているものまで様々です。高齢者に多い種類ですが、紫外線による肌老化が進んでいる方だと50代前後でも現れます。放っておいても特に健康上の問題はありません。
●タコ
タコは、皮膚の一部が慢性的に圧迫されたり摩擦を受けたりすることで角質が厚くなる症状です。足の裏にできることが多いですが、生活習慣や職業によっては手の平や指などにも現れます。放っておいても問題はありませんが、痛みや違和感が強い方に対しては、硬くなった角質を薬で柔らかくする・メスで切除するなどの治療もあります。
●ウオノメ
ウオノメも、タコと同じように皮膚の一部が慢性的に圧迫・摩擦されることで角質が硬くなる病変です。ただし、タコとちがってウオノメは病変の中心に硬い角質の芯ができます。そして、この芯が神経を圧迫して痛みが出ます。ウオノメができやすいのは、足の裏や足の指です。歩行時に痛みが強く出る場合は、市販のドーナツ型のパッドを貼る・角質を柔らかくする軟膏を塗るなどの治療を。市販薬でも対応できますが、ひどい場合は病院の治療をおすすめします。
まとめ
顔や手足などにできるイボには様々な種類があります。水イボやタコのように自然治癒するものや、スキンタッグや脂漏性角化症のように放っておいても問題ないものもありますが、ウイルス性イボの場合は適切な治療が必要です。気になる症状がある方は、一度最寄りの皮膚科を受診しましょう。
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。